危惧を覚えるIFRS礼賛の鶯地隆継氏(国際会計基準審議会理事)の主張 5月12日23面経済教室 | 海外事業の助っ人 深川国際経営

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鶯地隆継氏(おうち たかつぐ)の主張の要旨は以下のとおりである。
(1)韓国、台湾、マレーシア、メキシコ、ブラジル、ロシア、カナダ
  等多くの国々がIFRS適用に踏み切った。
(2)米国がIFRSを国内企業に強制していないから日本も何もしなくて
  も良いという理屈は通じない。
(3)IFRSは国際的に認知されており、日本基準は残念ながら国際
  市場で広く認知されていないから、時間を浪費することなくIFRS
  を採用すべきである。

IFRSが抱える欠陥について全く触れず、このような主張を展開
することに危惧を覚える。

私の主張は、大きく次の2点である。
(1)IFRS、米国基準共通の不健全性は、「のれん」の償却を
  わない点である。
(2)IFRSの欠陥は、一定要件を満たす研究開発費の資産計上
  する点である。

IFRSは、細部を企業の判断に委ねる「原則主義」をとる点も
恣意性の介入余地が大きく不健全
であると思う。

鶯地隆継氏の主張で「日本基準は残念ながら国際市場で
  広く認知されていない」
という点は認めざるを得ない。
日本人は英語下手な人が多く、日本の会計人がこれまで十分に
国際的な会合等で発言してこなかったこともあると思われる。

国際的な会計基準の普及には大いに賛成であるが、根本的な
部分で欠陥を抱えるIFRSや米国基準に合せることは許されない。
IFRSや米国基準自体の不健全な仕組みこそ改めるべきである。

欧米人の悪い癖は、いつも自分たちが正しいと信じている点
である。
良識ある日本の会計人が国際社会の中で堂々と主張することを
期待したい。

エンロン、ワールドコム等の米国発の不祥事でSOX法ができ
日本にもJ-SOXが導入されたが、オリンパスや大王製紙等の
不祥事は防げなかった。
J-SOXは、上場企業に手間とコスト増を招いただけで潤ったのは
一部のJ-SOXコンサル会社等だけではないのか。
おそらく上場企業の多くは本音の部分でJ-SOXが無駄であること
に気付いている筈。

外国のやり方を学ぶことは大事だが、よくないやり方まで
真似る必要はない。