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 心配された令和6年台風1号は未明に温帯低気圧に変りました。夜半からしっかりした雨脚が続きましたが、大雨・強風による通勤時間帯の列車遅延も在りませんでした。

 正午前後の陽射ししか当らないアプローチのヒマワリは細い茎が倒れて仕舞いましたが、前庭のユリたちは幸い倒れることも無く、駐車場に置いたポットの中では種から育てたナスタチウムが1輪、オレンジ色の花を開いていました。

 

 昨日目にした5月29日付読売新聞オンラインは、元東京都下水道局建設部長で日本下水道協会理事などを歴任した谷口尚弘さん(85)が小平市ふれあい下水道館で開催しているパネル展を紹介。「5000年に及ぶ世界の下水道の歴史を紹介するパネル展」とのことですが、記者の取材に対して谷口さんは

 

「ふだん目にしない下水道が、公衆衛生に重要な役割を果たしてきたことを知ってほしい。」

 

とお話しになったそうです。

 記事によると、「谷口さんは、1965年に都庁に入庁。都職員としてのキャリアの25年ほどを下水道局の技術職員として過ごし、下水処理施設の設計や計画などを担い、同局建設部長を最後に98年に定年退職。その後も日本下水道協会理事などを歴任」とのこと。

 

 わたしが入都したのは谷口さんよりほぼ四半世紀後になりますが、東京23区内にはその頃でもなお《未接続地域》が在りました。地盤沈下の著しい江東5区が中心ですが、世田谷区の多摩川近くや港区の海岸寄りでも下水道への接続が進まず、家庭用浄化槽を使用している地域も少なくありませんでした。けれども、谷口さんがおっしゃるように下水道を普段目にすることは出来ませんので、水洗トイレを使用していれば家庭用浄化槽を使用しているとは露程も思わず、下水道に接続しているものと思っていた住民も少なからず居たようです。

 

 赫々たるキャリアの谷口さんですが、40歳頃に上司から「日本の下水道の歴史を纏めたいから調べてくれ。」と指示されたため、「数々の文献をひもときながら、日本初の近代下水道設備『神田下水』(千代田区)に足を運ぶなどして調査を重ねるうち、『明治期の限られた財政事情で、効率的に都市の下水道整備を進めた先人たちの努力に驚いた』」のだそうです。

 

 要職を歴任された谷口さんは定年後も日本下水道協会理事を務められたので、研究に没頭出来るようになったのは協会退任後。記事によると、「弥生時代に下水機能を果たした神奈川県の水路の遺構、飛鳥時代に下水道として使われた福岡県の史跡、パリの下水資料館……など、精力的に実地調査に駆け回った」とのこと。「ローマの下水施設に入れてもらおうとしたけど、さすがにそれはダメだった」そうです。

 

 すっかり下水道史の生き字引になった谷口さんは、東京都下水道サービスで下水道に関する貴重な資料や書籍などの整理に当っていらっしゃるとか。流石に理事級職員ともなると、再任用を終了して70代、80代になっても職場が在るのは羨ましい限りです。

 

 一方、このところ特に東京新聞の記事で目にする機会が増えて来たのが日比谷公園元管理所長の高橋裕一さん(75)。高橋さんと言えば、自費出版なさった《日比谷公園の歴史と文化(上下)》を通じて都市公園の専門家として知られています。

 記事によると、高橋さんは「都庁に就職した1971年から5年間、同公園の事務所に勤務した。その後も都立公園関連の部署が長く、2006年から1年間、同公園の管理所長。定年退職後の09~12年にも、指定管理者の一員として同公園に勤めた」という都市公園行政のエキスパートですが、この頃は《日比谷公園をこよなく愛する会》の会長として公園再整備計画に対して

 

「そもそも緑を大切にする姿勢に欠けているのでは」

 

と批判する場面が増えて来ました。

 私怨を抱える人は別として、OBがわざわざ古巣と喧嘩したい筈が在りません。けれども、エキスパートであるが故に現代の行政に物申さなければならないことが累積して来たのでしょう。現役の局幹部にしてみれば苦虫のようなものでしょうけどね。

 

 わたしなどは、まだまだ《東洋のマンチェスター》などと言われていた大阪育ちですから、《公園》と聞いても《広場》との区別が判らなかった位ですが、上京して初めて《緑化された公園》を認識したように感じます。三方を山に囲まれ、生駒山から上る朝日を日々眺めていた大阪人は都市緑化の必要を感じなかったのかも知れませんが、町中に緑と水辺とを内包している東京の景観は新鮮で素晴らしく感じたものです。

 

 少し前にも採り上げたように、東京では市街地再開発事業の度にオープンスペースが増え、緑化も更に進んで景観も改善して来ました。しかし、事業で建設した施設建築物は何れ区分所有者の合意に基づいて建て替えなければなりません。より大きくより高くなった施設建築物が林立する景観を目にする度、誰が合意形成に動くのか心配になりますし、それ以前に、ビル風吹き荒れる地上を住民は最早通行出来ずに地下に追いやられるのではないかという心配にも苛まれそうです。

 5月30日付NHK首都圏NEWS WEBによると、「国連人権理事会の『ビジネスと人権』作業部会は、『人権に悪影響を及ぼす可能性がある』とする報告書を公表」したそうです。