デーテ叔母さんはハイジの亡くなったお母さんの妹で、両親の居ない赤ん坊のハイジを手許で育てて来ましたが、働かざるを得ないがためにフランクフルトに奉公に出ることになり、偏屈なアルムおんじにハイジを預けに行くことになりました。けれども、偏屈なアルムおんじの許にハイジを独りで置いて行くことは心配だったのでしょう。再びデルフリ村に現れ、ハイジの奉公先を見付けてフランクフルトに強制的に連れ去ります。
高畑勲監督のアニメや実写映画ではアルムおんじと対立して、ハイジを拉致するようにフランクフルトに連れ去るデーテ叔母さんですが、ハイジと同じように自分も両親を亡くした身の上。しかも、まだまだ20歳代と思しきうら若き女性です。粗野で無学の侭ではハイジの将来が開けないことを思案した上だったのでしょう。
ゼーゼマン家でクララの話し相手になったハイジでしたが、考えてみれば身分は奉公人に過ぎなかったのでしょう。執事のロッテンマイヤー夫人に厳しく躾けられますが、夫人とは言えロッテンマイヤーさんもデーテ叔母さん同様、配偶者が居るようには見えません。
粗野で無学な上にホームシックのために精神疾患の症状を呈するハイジに振り回されるロッテンマイヤーさんもまた父母や配偶者の居ない単身女性が独りで生計を立てる厳しさや生き辛さを噛み締め乍ら、有能な使用人としてゼーゼマン家を取り仕切ることに全力を挙げて来たのでしょう。
5月9日に放送されたハイジは2015年の作品ですから、流石にヨハンナさんの原作から大きく離れてはいないと思いますが、ヨハンナさん自身が19世紀市民社会のモラル下の女性をどう設定しているのか、非常に気になっています。