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 土曜日のお昼前にいなげやでコロッケを買い、自宅に戻って摘んでいると、《コロッケの歌》を歌を思い出しました。大正時代に帝国劇場の支配人だった益田太郎冠者(1875-1953)が作詞したことは知っていましたが、調べてみると
 
「1917(大正6)年に帝国劇場で上演された笑劇《ドッチャダンネ》の劇中歌」
 
という記述にぶつかりました。《ドッチャダンネ》という大阪弁のタイトルが意外でしたのでWikipedia《益田太郎冠者》の項目に当ってみると、三井物産を設立した男爵益田孝の次男で、欧州留学中にオペレッタやコントに親しみ、帰国後は喜劇脚本を数多く執筆したと在りました。
 
 帝国劇場の《帝劇の沿革》には
 
「開場当時の話題は、帝劇付属技芸学校を卒業した女優たちの演じる益田太郎冠者作の『女優劇』だった。ヒット作『ドッチャダンネ』は他の劇場でも改題して上演され、主題歌『コロッケの唄』も大流行。『女天下』『ラヴ哲学』なども評判。女優劇の歌と踊りの魅力は残された活字では理解できない。豪華な装置の前でのフィナーレの総踊り、森律子が手鏡を日本初の調光器を使う照明を当てて客席に返しながら、歌う魅力。女優劇の『洋行喜劇』の『世界めぐり』の手法や、狂言回しの口上役、三枚目役の設定は、後の宝塚歌劇でのレビュー、『浅草オペラ』や軽演劇にも影響を残した。」
 
と記載されていましたが、結局どんな作品だったのかは良く判りません。宝塚やSKDのような女性だけの舞台だったようですね。
 
 しかし、帝劇洋楽部はこの後解散して仕舞い、オペレッタや軽演劇などの興行は演出家・歌手・俳優などの手によって《浅草オペラ》として展開することになり、此処から藤原歌劇団創設者の藤原義江さん、ジャズの二村定一さん、喜劇王の榎本健一さんなどが頭角を現すことになります。

 更にネットサーフィンして行くと、神戸市に在る絵葉書資料館の収蔵品に《ドッチャダンネ》の舞台を写した絵葉書が在ることが判りました。

 どうやら、第一次世界大戦の戦争景気に沸く大阪在住の成金を風刺した内容のようですね。当時は、中之島公会堂の建設資金を寄付し乍ら、相場に失敗して自殺した株式仲買人岩本栄之助氏のような風雲児を成金と冷やかしたものですが、こういう世相を踏まえた現代劇だったのでしょうね。

 

 《コロッケの歌》の原題は《コロッケー》と言い、益田太郎冠者作詞作曲作品一覧の中に「作曲者不明」と記載されていたので、益田太郎冠者が作曲したのかどうか迄は不明ですが、
 
♪アハハハ アハハハ こりゃおかしい
♪ランラランランララララ ランランラン
 
の箇所にカール・タイケ作曲のマーチ《旧友》のフレーズが使われていることが昔から気になっていました。タイケは《旧友》を上司に酷評された直後に軍楽隊を辞め、後に警察官を経て郵便局員となり、1922(大正11)年に亡くなっていますが、生きている間に作品が極東の日本でも知られるようになったことは彼にとって良かったのかも知れません。代表曲《旧友》は軍楽隊を辞職する際の送別会に集った戦友たちに因んで曲名が付けられたのだそうです。
 
 因みに、益田太郎冠者の家族を見ると、兄弟揃って三井物産の重役を務めている中で、益田セクステットを結成したジャズピアニスト益田貞信という人がいました。その人についてWikipediaはさりげなく「笠置シヅ子とも交友があり、シヅ子の想い人でもあった」と記しているのが気になりました。ひょっとして、新納慎也さんが演じた方でしょうかはてなマーク 
 ろうの俳優米内山明宏さんと聞いても直ぐに思い出せませんでしたが、1980(昭和55)年に東京ろう演劇サークルを発足。同サークルは《窓ぎわのトットちゃん》の印税によって社会福祉法人トット基金を設立した黒柳徹子さんと出逢ったことにより、トット基金の付帯劇団《日本ろう劇団》として改称することになったとのこと。
 
 昨年成立した都条例においても、手話は独立した言語であることを明確にしたところですが、20世紀初頭にアメリカで盛んになった《口話》がろうあ者教育において進められ、手話は口話学習を妨げる《身振り手振り》として禁止された時代が長く続きました。
 
 ろうの両親を持つ養護学校の生徒たちは学芸会の演技を自分の親に理解して欲しいと願っていましたが、このような理由で手話が禁じられていたため、参観した保護者や生徒同士にも、劇の内容は伝わらなかったと米内山さんは話していました。

 この時代に、生徒一人ひとりに合せて口話だけでなく手話による教育も続けた校長先生の伝記が映画になったことも在りましたね。

  ETVの《みんなの手話》で目にする以外、生前の米内山さんを殆ど知りませんでしたが、それにしても70歳とは如何にも早過ぎます。70歳代前半で鬼籍に入られる芸能人が続くと、流石にわたしも気が弱くなります。