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 日々さまざまな報道を目にしますが、気に掛った記事の全てを採り上げることはなかなか出来ません。

 7月15日付朝日新聞朝刊が1面及び3面で報じていたこのニュース下矢印にはいろいろと考えさせられました。

 慶應義塾大学の研究チームが提出した臨床研究計画に対して、日本医学会の検討委員会が少数例に限り条件付きで子宮移植の臨床研究を容認する報告書を取り纏めたという内容でした。
 朝日新聞や読売新聞は高校在学中に無月経の治療のためのMRI検査で生れ付き子宮のないロキタンスキー症候群と診断された女性のインタビューも掲載。この症状は約4,500人に1人の割合で発症するそうですが、報告書によると、本人告知が行われなかったために支援を受けられなかったケースや、相談できる専門医やカウンセラーが紹介されなかったケースがあったとのこと。NHKニュースは
 
「報告書では、臨床研究が認められる条件を示し、子宮を提供する女性や移植を受ける女性の手術などの負担が大きいうえ、生まれてくる子どもを含めて長期的な影響が十分明らかになっていないため、リスクを含めて十分な説明を行うこと、当事者が自由な意思で移植を望んでいることを確実に担保すること、長期的な健康観察を行うことなどを挙げています。/さらに、臓器移植は脳死からの提供をもとに行うのが原則だとして、現在は認められていない脳死からの子宮の提供が行えるよう法令を改正することや、子宮のない女性に対して医師による説明やケアを徹底するよう提言しています。」
 
と報じるとともに、検討委員会の飯野正光委員長の
 
「当事者が十分リスクを理解したうえで強く希望するときには、それを排除できないという考え方が多くを占めた。実際に子宮移植を行う研究グループには、子宮を持たない女性に対し、移植以前に行うべきケアがあることを認識してもらいたい。」
 
という発言を紹介していました。報告書では移植以外の選択肢の整備、当事者に対する医学的・精神的なケアなども含めた具体的な検討を求めているようですが、この報告書が契機となって、多角的な検討が進むことを強く望みます。
 医学関係の記事をもう1つ。こちら下矢印東京医科大学病院感染制御部・感染症科の中村造准教授が第31回欧州臨床微生物学会議で行った報告内容を報じたもので、同病院内の温水洗浄便座のノズルから検出された多剤耐性緑膿菌と、このトイレを使用していた重症敗血症2例を含む多剤耐性緑膿菌感染者が保菌する株が一致することが判明したため、ノズルを媒介して感染する可能性が示唆されたとしています。

 但し、この記事に付けられたコメントには冷静なものが多く、日本感染症学会専門医の方によるとこの菌は「抗生物質を多く投与されている方から検出されることが多い菌であり、普段生活している環境には多剤耐性緑膿菌はあまりいません。そのため、家庭や外出先でただちに温水便座を使うのはやめましょう、とはなりません。」とのことでした。しかし乍ら、言われてみれば確かに入院患者間でノズルを共有するリスクなど、今迄考えもしていませんでした。余り神経質になる必要は無いでしょうが、気付いていないリスクもあることを認識しました。

 またまた話は変りますが、これもまた気になる報道。サンゴが褐虫藻という藻類と共生しており、海水温度の上昇によって褐虫藻がサンゴの細胞内から逃げ出して仕舞うと、残されたサンゴは栄養を補えなくなり死滅することが《白化現象》として知られていますが、抑々サンゴが褐虫藻と共生するメカニズムを解明した研究が報じられました。

 NHKニュースなどによると、サンゴの細胞が褐虫藻を取り込む瞬間の映像を沖縄科学技術大学院大学高知大学の研究グループが世界で初めて撮影に成功したそうです。実験容器の中で培養したサンゴの細胞は仮足という突起を褐虫藻に向って伸ばし、30分程掛けて細胞内に取り込むのだとかびっくり

 

 記事によると、鞭毛をもつ褐虫藻と球形の褐虫藻を同じ容器に入れたところ、サンゴの細胞は球形の褐虫藻にだけ仮足を伸ばして取り込むことが判ったとのこと。鞭毛で泳ぎ回る褐虫藻が精子のように細胞に突入するのではなく、寧ろサンゴのほうが積極的に静かな褐虫藻を狙っていることが判ったのですね。

 

 また、取り込まれた後の褐虫藻を観察すると、分解されたものと膜に包まれて細胞内に取り込まれているものとが観察されたとのこと。ということは、サンゴの細胞は初めから「褐虫藻と共生しよう。」と意図しているのではなく、どうやら捕食のために仮足を伸ばしているようで、共生関係が確立された現在においても、褐虫藻を捕食していた頃の行動が残っているようです。

 

 確認してみたところ、サンゴの白化現象は褐虫藻がサンゴの細胞内から逃げ出すのではなく、環境ストレスを受けて損傷した褐虫藻をサンゴのほうから放出する現象だそうで、共生関係においてはどうやらサンゴのほうが主導権を握っているようでした。