日々さまざまな報道を目にしますが、気に掛った記事の全てを採り上げることはなかなか出来ません。
7月15日付朝日新聞朝刊が1面及び3面で報じていたこのニュースにはいろいろと考えさせられました。
但し、この記事に付けられたコメントには冷静なものが多く、日本感染症学会専門医の方によるとこの菌は「抗生物質を多く投与されている方から検出されることが多い菌であり、普段生活している環境には多剤耐性緑膿菌はあまりいません。そのため、家庭や外出先でただちに温水便座を使うのはやめましょう、とはなりません。」とのことでした。しかし乍ら、言われてみれば確かに入院患者間でノズルを共有するリスクなど、今迄考えもしていませんでした。余り神経質になる必要は無いでしょうが、気付いていないリスクもあることを認識しました。
またまた話は変りますが、これもまた気になる報道。サンゴが褐虫藻という藻類と共生しており、海水温度の上昇によって褐虫藻がサンゴの細胞内から逃げ出して仕舞うと、残されたサンゴは栄養を補えなくなり死滅することが《白化現象》として知られていますが、抑々サンゴが褐虫藻と共生するメカニズムを解明した研究が報じられました。
NHKニュースなどによると、サンゴの細胞が褐虫藻を取り込む瞬間の映像を沖縄科学技術大学院大学と高知大学の研究グループが世界で初めて撮影に成功したそうです。実験容器の中で培養したサンゴの細胞は仮足という突起を褐虫藻に向って伸ばし、30分程掛けて細胞内に取り込むのだとか。
記事によると、鞭毛をもつ褐虫藻と球形の褐虫藻を同じ容器に入れたところ、サンゴの細胞は球形の褐虫藻にだけ仮足を伸ばして取り込むことが判ったとのこと。鞭毛で泳ぎ回る褐虫藻が精子のように細胞に突入するのではなく、寧ろサンゴのほうが積極的に静かな褐虫藻を狙っていることが判ったのですね。
また、取り込まれた後の褐虫藻を観察すると、分解されたものと膜に包まれて細胞内に取り込まれているものとが観察されたとのこと。ということは、サンゴの細胞は初めから「褐虫藻と共生しよう。」と意図しているのではなく、どうやら捕食のために仮足を伸ばしているようで、共生関係が確立された現在においても、褐虫藻を捕食していた頃の行動が残っているようです。
確認してみたところ、サンゴの白化現象は褐虫藻がサンゴの細胞内から逃げ出すのではなく、環境ストレスを受けて損傷した褐虫藻をサンゴのほうから放出する現象だそうで、共生関係においてはどうやらサンゴのほうが主導権を握っているようでした。