中古ポルシェ専門店に彼女はいた。

その店の社長は早く厄介払いしたいような口ぶりで「好きなだけ試乗して来て下さいね~」と明るく言った。

私はその日のうちに、「モンディアル」の最善の処分を考え抜き、足りない資金をかき集めた。

「フェラーリ328GTS」、89年モデルの最終型ドイツ仕様。

外装色は珍しいソリッドの黒で、内装はマグノリアと呼ぶホワイトレザー。

もう夢のようだった。

「328」は私の憧れの車で、夢の車だった。

学生時代、ビルの掃除のバイトやガソリンスタンドのバイトをしながら、「いつか328に乗ってやる。」と思い続けていた。

探し物は諦めた頃に見つかると歌ったが、諦めてはいけない。

私は諦めなかったから、夢を叶えることが出来たのだから。