『劇画・オバQ』(『ミノタウロスの皿』小学館文庫所収 初出誌ビックコミック1973年2月25日号)
15年後、ひょんなことからQちゃんが戻ってくる。正太は美人な奥さんをもらい、幸せな生活を送る。居そうそうを始めるQちやんは子供のまま。
厚かましく、翌日仕事の正太と朝4時まで話をし、ごはんは20杯食べ、出勤中の正太の会社へ電話する。子供の時の話や幼稚らしい話を繰り返し、夫婦の大人の話にはついていけない。
業を煮やした奥さんは、寝室で「ねえ、Qちゃんいつ帰るの?」と言い、正太は「もうしばらく我慢してよ」と答えるしかない。それをQちゃんは聞いてしまう。
しょんぼりのQちゃんは、気を取り直し懐かしい場所を訪ねる。しかし住んでいた家にはマンションが立ち、空き地は住宅が並び、雑木林はゴルフ練習場。
そこにガキ大将であったゴジラが現れ、彼の肝いりでみんなが集まる。皆大人になったが、ハカセだけ夢を追い続け失敗を繰り返しながらも新事業を企てる。以前より正太もそれに誘われている。
これにゴジラは「やめとけ、やめとけ!」と否定し、木佐は「要するにガキなんだよ、早く大人にならなきゃダメなんだよ」と批判する。
しかし、酔いが回るにつれ懐かしい子供時代を思い出す。ハカセも、大人になっても子供の夢を持つべきだ、と訴える。
みんな新事業をやろう!と盛り上がる。
しかし、翌朝。正太はそのことをすっかり忘れてしまう。Qちゃんが強く促し、正太は妻に相談へ行く。
そこに、妻は妊娠を発表する。
全てが吹き飛んだ。
正太欣喜雀躍。
新事業など全て無し、勇んで会社へ向かうのであった。
「正ちゃんはもう子供じゃないってことだな…」「…な…」
Qちゃんは、誰にも別れを告げず空へ去っていく。
藤子Aが描いたのでは?と疑いがでるほどのリアリズム。読後感は哀しい、の一言。