オレの母であり、我が家のおばあちゃんでもあるちゃーちゃんが電話口でそうもらしたのは、長男おーちゃんが幼稚園を卒園する数日前のことだった。
そう、おーちゃんは今年の3月に幼稚園を卒園したのだ。この春から小学生だなんて、なんだかついていけないタイム感だ。
思えば、今から3年前
おーちゃんは毎日泣きながら幼稚園に通っていて、それは年少さんの夏休みまで毎日ずっと続いていた。
でも、あれから3年
おーちゃんは、あっという間にデカくなり、幼稚園から帰りたくない!幼稚園楽しすぎー!とすっかりたくましくなり最高の3年間をすごしての卒園を迎えていた。
もう"あの頃の"おーちゃんではなくなっていくことへのさびしさが、母の口からポロっとこぼれたのかもしれない。そしてそれはもちろん、オレたち夫婦も感じていることでもあった。
オレは、卒園式の夜、母に電話でこう伝えた。
無事卒園したよ。小学生になってもちゃーちゃんちゃーちゃんて甘えるだろうから、よろしく頼むね。
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去年、豊洲ぐるり公園で生まれてはじめての海釣りをして何も釣れなかったおーちゃんに、今回こそはとリベンジで向かったのが江ノ島。ここは、オレがこどもの頃からよく父と母と釣りをした思い出の場所でもある。
大人になった今も趣味として続けている釣り。オレがしてもらったことと同じことをしてやりたくて、去年から2人で釣りに行きはじめたのだ。
だから今回は、なんとしても釣れる喜びを味合わせてやりたい!という使命感が、オレにはあった。
そんなオレの気持ちを知ることのないおーちゃんは、到着するやいなや
ここはちゃーちゃん家から近いんでしょ?ちゃーちゃん来ないかなあ?電話しよ!
と早速のちゃーちゃんコールw
母に電話をして、釣りに来ていることを伝えると
わかった、今から行くねー!
と、こちらも早速のひとつ返事w
75歳だってのに、ノリが若い。20分後車で颯爽と現れた。
釣り場から一番遠い駐車場に停めて…w
そんなこんなで、ちゃーちゃんが来てくれたのだが、この日は潮も悪く強風で、さらには気温も一気に下がり出し、なかなかハードな展開に。
釣り開始から1時間半。もちろんまだ1匹も釣れていない。周りも誰も釣れていないし、帰り始めている人もチラホラ。なんならおーちゃんは、到着後腹ペコで食べ始めた昼ごはんの唐揚げを一瞬にしてとんびに奪われてもいたw
嫌な予感だ…このままじゃ、またボウズだ
オレはラストチャンスにかけるべく、そろそろ帰ろうよオーラを出しているおーちゃんに言った。
今日は1匹釣るまで帰らないぞ。あとどれくらいできる?
おーちゃんは帰りたいという気持ちをグッとこらえてこう言った。
あとぉ…30分!
えらい、よくぞ言った!時刻は15:50。制限時間は30分。
そして残り時間10分となった16:10!
ついにそのときはやってくる。
おーちゃんの竿が重たいというのだ。たしかに重たい。投げ釣りだから、ひきこそないものの、この感じ…これは釣れてるにちがいない。
おーちゃん!これ釣れてるぞ!巻いてみ!
え、ホントに?
と巻いた糸の先には、ついに!人生初の魚が!
それはなんと、キス!
人生ではじめて釣り上げた魚がキスなんて、めちゃくちゃすごいぞ!ある意味ファーストキスだ♪と、3人でワイワイ盛り上がった。
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翌朝。
キスを釣ったときの話をママや妹のふーちゃんに誇らしげに語ったおーちゃんは、塩焼きにしたキスを骨までペロリとたいらげた。その姿を見て、あらためて大きくなったもんだなあと感じたオレは、その写真を母に送ってみた。
その返信には顔文字とともにこう書かれてあった。
大きくなったね^_^
大きくなる喜びと、なんだか大きくなることへの寂しさ。でも、いつまでもこどもはこどもで、孫は孫。それだけはずっと変わらない。
今度はママとふーちゃんも一緒にみんなで釣りに行こう!
みんなとその約束をした息子は、この春晴れて小学生になる。
拝啓 父へ
おーちゃんは釣りが好きな小学生になりそうです。
つづく







