心が叫びたがってるんだ 小説 -2ページ目

次の日学校に行くと、急遽音楽の授業が最後の授業に入った。

「今日はミュージカルの授業をしまーす」

しまっちょがやや拓実に目を向けながら楽しそうに話す。

「今流してるのは、オズの魔法使いっていう映画の世界的大ヒットをした歌なんだ、知ってる人も少なくないだろー?」

生徒はみんな大して興味もなさそうに、しまっちょの話をきかず、生徒たちで違う話題で盛り上がっているようだ。数人真面目にしまっちょの話を聞いているようだが、飽きてしまったのかすぐ友達と話し始めてしまった。

「ミュージカル意味わかんねーよなあー、なんであそこで急に歌いだすのか!」

「本当な!拓実もそう思うだろ?」

「…俺はなんとなくわかるけどな、普通に言葉では言えなくても歌だったら、口に出せたりするじゃん」

岩木と相沢の話に、率直に思ったことを言っただけだったが、二人には笑われてしまった。そんなものかなぁ…と、拓実の話に共感する様子はまるでなかった。今日は放課後にふれ交委員4人集まることになっていたので少し急いで音楽室に向かった。

「失礼します」

そういって入ると中にはもう順と菜月がいた。大樹がこないのは、遅れているのではなく来る気がないのであろう。

「今日は話があってよんだんだ、あのな?どーーーしても坂上がふれ交でミュージカルをやりたいそうなんだよ…、お前ら協力してくれるか?」

「はぁ?それは先生が言い出しっぺだろうが!!」

「照れんなって~、な?仁藤どうだ?」

「私はいいですけど…クラスの人はどう思いますかね?そんな熱心にやるとは思いませんけど…」

菜月がそう答えると、順もそれに続いて頷く。拓実はもう諦めた様子だ。

「とりあえず、候補に入れといてさぁ、明日のHRで聞いてみよう、な?」

完全にしまっちょのペースに乗せられてしまった、と拓実は大きくため息をつく

「わかりましたよ…」

「それじゃあ決定だ!じゃあまた明日のHRよろしくな~」

音楽室を出ると、チア部の生徒がこっちをみて、大きな声で菜月をよんだ。

「菜月!練習合わせるから早く来て!」

「うん!わかった、すぐいく!それじゃあ、また明日ね!」

菜月はチア部のキャプテンであり、拓実とは同じ中学出身である。普段おろしている長い髪はチアをやる時はむすぶようだ。

「それじゃあ、俺も帰るわ…、また明日な」

順にそういうと、大きく頷いた。玄関まで歩いていると順が何か言いたそうな顔でこっちをついてくる。校舎を出たくらいで少し勇気をふりしぼり拓実は聞く。

「…成瀬ってさ、ミュージカル、やりたかったりする?」

順は驚いた様子で、何か決心をしたような顔で慌てて携帯を取り出した。ガラケーを出すと必死に文字をうち、拓実に見せる。

(私の心、覗きましたか?)

「…え?いや、見てないけど…」

拓実は顔を赤くした順に、腕を掴まれて何処かへ引っ張られていった。

「ちょ、どこいくんだよ!」

少ししてついたのは、朝卵を拾った近くの神社だった。そこに座らされ、順は携帯で拓実とメールでやりとりをしていた、やりとりといっても、一方的だが。そこで順が喋れなくなるに至った過去を聞いた。

「山の上のお城に憧れていたって…、あの潰れたラブホか?」

順は少し恥ずかしがりながらも大きく頷く。お城に憧れており、自分の発言によって家族が崩壊してしまったこと、卵によって喋ることができなくなってしまったこと。その他にもたくさん聞いた。

(これは、フィクションではありません。)

順のメールを拓実はいちいち声に出して読み返した。拓実は驚きながらもその話を信じた。

(私、喋ると)

(お腹痛くなっちゃうんです)

と順は手振り身振りも加えて会話する。拓実が返信しようとした時返信する前に携帯が鳴った。

(本当に思いますか?)

(歌の方が気持ちが伝わるって)

拓実は聞いていたのか、と少し驚きながらも文字ではなく、拓実の声で答える。

「歌ってさ、元々気持ちを伝えるものだと思うし、俺自身言えないことってあるから俺はそう思ってるよ。」

順は何処か嬉しそうな顔をして、満足そうな顔をしていた。拓実が順の笑顔につられて笑うと順は突然立ち上がり、走って帰ってしまった。

「なんだあいつ…」

ふと携帯に目を落とすと、ぴろりんっと音がなった。

「帰ります。申し訳ありません。」

拓実はくすっと笑い、自転車に手をかけた。