10月26日(木)の午後から27日(金)の午前にかけて、「甲州・東海ブロック家族会精神保健福祉促進研修会三重大会」が四日市市の文化会館にて開催されました。愛知県・三重県・静岡県・岐阜県・山梨県の家族会が持ち巡りで幹事を引き受けています(今回は三重県です)。第1日目は230人、2日間では延べ334名が参加されました。丹誠会からは会長が代表して2日間参加しました。

<テーマ> みんなが当たり前に暮らす地域をめざして

       『こころのバリアフリーを広げよう

<研修会プログラム>

第1日目 10月26日(木)

12:00 オープニングセレモニー

13:00 開会式

13:40 基調講演 講師:夏苅郁子氏 やきつべの径診療所医師

  演題『こころの病は、あなたの人生のどこかで出会う病気です』

 ~患者・家族・精神科医の3つの立場を経験した私から伝えたいこと

 ※概要を後述しています

15:50 みんなねっと活動報告(岡田理事長)

16:20 各県連活動報告

第2日目 10月27日(金)

9:30 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを考える

  第1分科会 「住まいの課題について」

    コーディネーター 牛場裕治 氏 福井県立大学 助教

  第2分科会 「社会参加の課題について」

    コーディネーター 田中宏幸 氏 田中宏幸社会福祉事務所

  第3分科会 「親亡き後について」

    コーディネーター 堀場洋二 氏 元名家連会長

11:45 全体会(分科会報告)

12:10 閉会式

 

基調講演  講師:やきつべの径診療所  夏苅 郁子 医師

夏苅先生のプロフィール

北海道生まれ。10歳の時、母親が統合失調症にかかる。両親が離婚した後、病んだ母親と二人の孤立した過酷な少女時代を送る。

浜松医科大学医学部卒業後、同精神科助手、共立菊川病院、精神科浜松病院を経て、2000年やきべつの径診療所(静岡県焼津市)を開業。現在は、焼津市在住で、精神科医である夫とともに診療所を営む傍ら、母の介護経験を基とした統合失調症の理解・啓蒙のための運動に取り組む。全国各地から講演依頼が殺到している。

 <夏苅先生の説明>

若い世代が精神疾患のために人生を損なうことが無いように、良い医療を当事者・家屋・医療者が「ともに」作っていきたい

⇒私が現在、取り組んでいる4つのことを紹介します

※皆さんの活動とは少し異なるかもしれませんが「私ならではの活動」もあると思っている

取り組んでいること その1 精神疾患の原因究明のための研究への協力

 名古屋大学の遺伝子研究に参加。皆さんの研究への要望を集めています。アンケートオンライン調査にご協力下さい。

http://prenatal.nupsy.jp   ID:nagoya-u   パスワード:sk25ugsk

取り組んでいること その2 当事者・家族へ医師の気持ちを伝える活動

取り組んでいること その3 お互いを理解するには医者も当事者・家族のことをもっとよく知るべきへ⇒診察に対する当事者・家族の想いを医師に伝える活動

取り組んでいること その4

・精神科医に対して⇒「精神医療審査会」への当事者・家族参加の推進

 (精神科医療を見張り、育てる)

・精神医学研究に対して⇒「倫理審査委員会」への当事者・家族の参加の推進

 (研究を見張り、育てる)

提言だけの呼応だけではなく実際の医療・研究でも協働していきたい

<質疑応答>13:30~15:45

○家族会と病院は車の両輪と言われている。現実は、病院家族会が消滅している。病院は家族会をどう思っているのか?

⇒カリスマ性のある先生がいないと存続が難しいのが現実。病院の中から立ち上がらないと・・・。

○滝山事件での虐待の現状を考えると、職員の数を増やさないといけないと思うが、精神科特例の話が出ないのは何故か?

⇒「精神神経学会」(会員数18000人)から5月に国に対する提言があったが、精神科特例は全く出なかった。彼らが本来提言すべきだが、医師等の必要数を増やしたら経営が成り立たなくなってしまう。経営が優先される組織といえる。理事の選挙になるとドアを施錠して、20人がすぐに決まった。「日精協」や「日精審」からの選出が多い。心の底では良いとは思っていないだろうが、猫に鈴を付ける人がいない。

○当事者に合った薬は見つかるのか?

⇒精神科では一発で治る薬は殆ど無い。エブリファイをジプレキサに変えて治るとは思えない。慢性的な人ほど考え難い。

○障害者施設に開業医(精神科)が来ることがない。おかしいのでは?

⇒嘱託医は必要だが名前だけ。儲からないから開業医が常駐することは無理。訪問看護の報酬が出れば別だが・・・。報酬が見合えば来ると言うことでしょう。ひきこもりにはオンライン診療が効果的。しかし、このためのパソコン等設備導入は病院の負担となっているため、患者の利益よりも経費が重視されている。

○先生の話は何回聞いても良いですね⇒進化しているからです(夏苅)。

○ACTは何故広まらないのか?⇒経費がかかるから経営上難しい。静岡県では浜松のぴあクリニックが頑張っている。私も各病院からスタッフを1名出してチームを企画したが、この5年間無実施です。「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」事業にも出てこない。ACT-Kの高木俊介先生のような全共闘出の熱血漢が出てこない限り無理ですね。

○精神保健福祉士の受験勉強中。実習先の精神科病院での患者の話では、小さい子供たちに共通することが多い。因果関係(遺伝)があるのではないか?

⇒因果関係はあっても逆境に耐える人もいる。逆に、ストレスに弱い人には手厚い保護が必要なのに、いじめや可哀想という目で差別されている。これらの子がグレイゾーンだが、環境に適応する能力が低く狭い範囲でしか適応できない。長期的な支援が必要です。フリースクールはありがたい。

○作業能率を考えると経営者は障害者を雇うのは難しい。社会的な補助が必要な理由です。

○日精協(日本精神科病院協会)会長の川崎先生はNHKのEテレで、「私たちは医療だけでなく治安も引き受けている」と言っていた。「精神障害者はたまたま病気になっただけ」と言いながら「放ったらかしたら危険」と言う。偏見のかたまりです。

医師の団体(学会)が忖度を止め諫めるべきだと思います。