どうやらここが天国という場所らしい


人生80年、可もなく不可もなく
平凡だったけど、大きな病気になることもなく終えることができた


きっと僕は幸せだったんだと思う
終わってみればあっという間だったけど
平凡がきっと1番難しかったりもする


そう自分に言い聞かせるように歩く男の前に
大きな白い建物が現れた


表札を見るとこう書いてある


" 神さまの家 "


神さまって…あの神さまだよな…


おそるおそるインターフォンを押すと
神さまらしき人物から反応があった
程なくしてドアが開いた


「あぁ、待ってたよ、さ、入って入って」


中に入ると、ごく普通の一軒家
コンロの上のヤカンがせわしなく鳴っていた


「今コーヒー淹れるから、とりま座っといて」


やけにフランクな神さまだな
神さまは淹れたてのコーヒーを2つ持ってきて
ドカッと僕の前に座った


「とりま、乾杯しますか!コーヒーだけど」


「は、はぁ」


「それじゃ、人生80年大往生を祝して乾杯!」


為すがままに乾杯をする僕
そしてテンションの高い、高すぎる神さま
神さまってなんかもっと静かで高尚なイメージあったけど…


死んでもなお未知のことばかりだ
ミルクを混ぜながらそう思った


「それじゃ、今までのこと色々聞かせてよ」


コーヒーを片手に僕は神さまと
これまでの人生のことを沢山話した


ふいに神さまがこう言う


「人生色々だよね、島倉千代子だよね。
どう?人生振り返ってみて?」


「現実は大変なことも多かったよね」


「まあね。ちなみに自分、本気で頑張ってきたと思う、現実で?」


「え?…あぁ、うん、頑張ったとは思うけど」


「なるほどね。でもさ、正直もっと頑張れたんじゃない?」


「確かにもっと頑張れた気はします」


すると神さまが、1枚のDVDを取り出す


「実はこれ、君が本気の本気で頑張ってたら、どんな人生になってたかが記録されてるDVD」


「マジっすか!?」


「うん、マジマジ。観てみる?」


「うん、観てみる」


そこに映し出されたのは、今までの人生とは180度異なる世界


もっと真剣に頑張ってたら
こんな素晴らしい人生だったんだ…


満面の笑みで映っている自分
そんな自分を観て、言葉が出なかった
なんだかみじめで悔しくて
自然と涙がこぼれた


神さまが意地悪く言う


「どう?もうちょい頑張っとけば良かったね」


胸に刺さる
だけどもう死んでしまったから


「その通り。君はもう死んでしまってる。人生は誰もが一度きり、例外はない。真剣に頑張ってれば良かったって思ったっしょ?」



「思いました。真剣に頑張れば良かった
僕はここぞと言う時に逃げてました。そんな自分に気付いていながら、どこかで言い訳して、誤魔化して、見て見ぬフリしてたんです」


「じゃあ、もっかいやり直す?人間。」


「え?そんなこと出来るんですか?」


「出来る出来る!俺を誰だと思ってんの?神さまよ?でも1つだけ条件あって、ここでDVDを観たっていう記憶は消されちゃう。どうする?それでも頑張る?」


「頑張る」


「OK!じゃあ記憶消すよー、現実に戻りな、いくよ?せーの、、はいっ」











と言われて戻ってきたのが今のあなたかもしれません


頑張ろうという魂を本当は持っているのに
現実に翻弄されて、その使命を忘れかけているのかもしれません


神さまも言っていました
人生は誰もが一度きり、例外はない、と


また天国でもう一度DVDを観る?
それとも、もっと本当でやれる と知っている自分を思い出す?


思い出そう、本当の自分を。