日常生活の中で、悩みを打ち明けられたり、相談をもちかけられたりして、他人の大事な話を聞くという経験は、多かれ少なかれあるのではないでしょうか?
あるいは、
もっとカジュアルに、夫の会社の愚痴や、子どもの学校での話、友人の恋愛話など、誰かの「話したい!」気持ちを聞く機会は少なからずあるだろうと思います。
私自身、心理療法士になって改めて「人を傷つけずに話を聴くことは本当に難しいことだな」と身をもって思い知ったんです。
悩みは、絡まった糸玉みたいなものです。
私は、まずその糸をほどくための糸口探しから始めるんです。
クライエントさんの訴えをただ受け止めるだけでは見えてこない、さまざまな要素を切り分けて、確認していくと、一本の糸がぐちゃぐちゃになっていることもあるけれど、たいていは複数のことがらが複雑に絡み合っていることが多い…。
「じゃあ、どこからだったら解いていけるんだろう?」と考えながら聴くのが、プロの聴き方だと思います。
これを心理学では、「アセスメント」と言います。
悩み事をただ大きなストーリーとして受け止めるのではなく、その内容を分析し、最初にアプローチすべきことがらを探していく。
あと、困っていることだけに意識を向けていくと苦しくなるので、今、その人が上手くできている部分を確認することからはじめるのもいいと思うんです。
ものすごく大きな悩みを抱えながらも、それでもしっかり社会生活を送っている人はたくさんいらっしゃいます。
私は、そういう方に対して、
こんなに大変なのに〇〇ができてるのはすごいことだと思うし、頑張ってこられたんだなって思うので、褒め労いたい気持ちが湧き上がってきます。
私は、そのようなクライエントさんに対して、「こんな辛いことを抱えて、よく日常生活を過ごされてきましたね。それはすごいことです!」ということを伝えたくなりますし、困っている中でも上手くいっていること、機能していることを確認し合うことから一緒にやりたいと思うんです。
カウンセリングの世界では、「困りごとを机の上に置いて話しましょう」というふうによく言われます。
私は、解決策を提示したくなってしまうほうなので、心理療法士になったばかりのころは大変苦労しましたが…
実際、聴いてすぐ思いつくことって、たいていクライエントさんはすでに試していることも多かったりします💦
だからこそ、
クライエントさんと私、どちらからも同じ距離で困りごとを見つめるような感覚を保つのが基本姿勢!
この基本姿勢を大切にしながら心理療法士としてできることを精一杯させていただくんです。
絡まった糸玉を真ん中に置いて、「これ、どうしましょうね」と、いっしょに見つめながら聴くことを意識するのは、日常で相談を受けるときにも役立つかもしれません。
加藤絢子