【 前田建設ファンタジー営業部 】
バブル崩壊後、ゼネコンの案件はどんどん縮小するばかり。
ダム、トンネルなど数々の大プロジェクトに携わってきた中堅の前田建設工業株式会社においてもその例にもれず、前田建設工業広報部の部長、小木博明演じるアサガワ部長は日々その面目躍如となるべき企画を考え続けていた。
ある規格を思いついた彼の目に止まったのは
イケメン広報部員、高杉真宙演じる土井、
かつて土木のエースと言われていたが何故か広報に配属されていた上地雄介演じるベッショ、
広報の紅一点ながらそのやる気はあまり無く、腰かけ程度にしか考えていないような、岸井ゆきの演じるエモト、
建築に関する知識に並々ならぬものはあるものの、その特異なキャラクター故か、やや窓際的なMポジションにある広報に配属されている、本多力演じるチカダ
の4人。
突然
『マジンガーZの格納庫を実際に作ったらどうなるか!現実に作るんじゃない!空想で!でも本気で作るんだ!前田建設ファンタジー営業部始動なんだよ!!!』
と宣言し、ほんの思いつきかと思いきや、既に会社の隅々まで根回しを終えていたアサガワの前に蛇に睨まれたカエルのように為すすべもなく構成員として引き込まれた4人の取った行動とは。
濱田マリ、六角精児、鶴見慎吾、鈴木拓、そして本人役で永井豪先生までを迎え、実在の前田建設工業株式会社が
『アニメやゲームに登場する建造物を実際に作ったらどうなるか?』を本格的に検証するWEBコンテンツ
『前田建設ファンタジー営業部』
を実写映画化。
脚本は『サマータイムマシン・ブルース』などその巧妙な作品で知られる劇団ヨーロッパ企画の上田誠が脚本を手がけ、『賭ケグルイ』の英勉がメガホンをとった。
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自分の中では完全にダークホースだったんですけど、周囲の評価がやたら高かったので鑑賞。レ・ミゼラブルを差し置いて、です。。。
まず、小木博明と本多力の安心感w。 キャスティングの良さに加え、やはり上田誠さんによる脚本の建て付けが素晴らしい。 ファンタジーの枠を超えた夢とロマンの立て坑掘削、実に面白かったです。
『空想の世界はブルーオーシャンなんだよ!!!
作っては壊し、また作っては壊しなんだよフハハハ!』
『ちょちょちょ、とりあえずブレストしよう!!』
めっちゃくちゃ熱いんだけどちょっと何言ってるか分からないアサガワ部長ww
なんだけど、これがですね、後でね、この人は本当に会社のことを、共に働く仲間のことを心から考え抜いた果てに辿り着いた上でこのことをみんなに話して、半ば無理やりにこのチームを引っ張ったんだと分かってジーンとなるんですよ。。。
そして実際に前田建設工業のマスコット、まえだくんも登場w
ちょっともう少しマシな写真なかったの?と言いたくもなる公式写真の本田力さん。ヨーロッパ企画と言えばこの人、抜群の安定感は今作でも遺憾なく発揮されておりました。少し
頼りなげなんだけど、いざ自分のフィールドに持ち込むと無敵のぶち上げを見せるキャラクター、バチバチにはまってました。
過去には土木のエースとまで言われたものの、現在は少しくすぶってしまっているベッショ主任。小さな息子を想い、家族を想いながらも燃える案件に飢えているキャラクターがまさかの爆発を見せる。
上地くん、よく頑張りました。
やる気が無いわけではないんだけど、正直土木や建築にはあまり興味の無いOL、エモトを演じる岸井ゆきのさん。
過去にクリトリックスリスさんと共演していたことが黒歴史と言われかねない好演でしたw居眠りシーンの多用は少ししつこいなとは思いましたけど。
そしてただ一つ、女性社員という存在をなかなかに時代遅れな描き方、何か足手まとい的なイメージ(腰かけ程度にしか仕事を見ていないという先入観を持った生き物のような、、、)をしていたのが少し引っかかりましたが、この設定にはここで文句は付けないこととします。
イケメン、という存在が物語に悪い影響を及ぼすリスクを危惧していたんですが、今作ではその不安を含めてこのキャスティングに昇華していて、違和感なく、起用の巧みさを感じる演出には納得でした。
そしてエモトのエモーショナルターゲット、土木のヤマダ、を演じる町田啓太。
爽やかでいてオタク。見事な演出とその演技は好感度バツグン。そりゃやる気の無いエモトさんも恋に落ちますよ。w
原作に忠実に、
・あのプールは汚水処理場でもあるから環境汚染についても考えないといけない
・地理的に富士山麓だからその土壌を鑑みて掘削方法は、、、
・マジンガーの登場にはジャキアップなんだけど、10秒で地下から出すほどのスピードをもったジャッキアップはどうするのか
・数百トンの水を押しのけ開閉するゲートの構造は
・第46話ではゲートの開き方がまるで違う!感情の揺れとリンクしちゃってるw
・第69話 ホバーパイルダーの回、さらにゆらぐw
・前田製作所、栗本鉄工所、日立建設を巻き込んだ機械屋の意地
などなどじつに緻密な考察を重ねながら夢とロマンを増幅していくストーリーには熱いものがありました。
オープニングと上手く重ねられた円環構造、
『夢は無限に作れるんだ!』
この作品を観て初めて分かるこの言葉の意味深さ、まさかの感動なんですよこれが^^。
そして公式に上げられちゃってるこの↓写真。マジンガー、ちゃうでしょ。デスラー総統ですよね。これが何を意味するのかは作品を観てのお楽しみ、という事で。
実に良い作品、今の日本で観る素晴らしい1本となりました。