学校生活 43−5 コンプレックスからの立ち直り
それは30代後半に起こりました。
当時、私たち夫婦は縁あってオーストラリアからやったきた元教師の女性に英会話を教えてもらっていました。
と言っても、殆ど日本語での雑談ですので彼女は日本語が上手になりましたががこちらは全然でした。
そんなある日の雑談で家内が私がハゲを気にしていることを話しました。
海外のハゲ事情を聞きたかったのです。
彼女曰く「バーカ」
気にする人も少しはいるが海外では禿げることは殆ど話題の対象にならないそうです。
ハゲている人がポピュラーだと言っていました。
「ハゲを出し1ヶ月もすれば皆んな話題にしなくなるよ」
*****
私は家に帰り、鏡の前で頭のてっぺんを見つめました。
翌日、いつもの様に鏡の前に立ち、ヘアー・ースプレーとブラシを持って隠し事を始めようとした時、手が止まりました。
このままで出掛けよう。
駅までの道のりが何と長かったこと。
頭のてっぺんはスースーしていました。
しかし、誰も私の事など気にしていない様子。
皆んな足早に駅の方に向かって行きました。
電車が来ると意外に空いていました。
運悪く出口付近の席に座りました。
次の駅で女子高校生の一団が乗り込んできました。
私はスースーする頭のてっぺんを気にしていましたが彼女達は私を全く無視。
誰もハゲの話題はしません。
電車が普通部のある日吉駅に着くと普通部の生徒たちが登校していました。
次々に私に挨拶をして行きました。
誰も私がハゲを出していることに視線を合わせません。
*****
学校について教員室に足を向けました。
同僚は誰も私がハゲをあらわにしていることに触れません。
技術室に戻りました。
確か今日の一限は例の暇な生徒のクラスです。
授業が始まりました。
生徒は気ままに木工を始めました。
私はわざと例の暇な生徒のところへ近づきました。
彼は何もアクションを起こしません!
変な感じでした。
こうして私の初日は無事に過ぎました。
帰宅すると疲れがドッと出ました。
この日を境に私はありのままで通勤しています。
そして、この日から口髭を生やし始めました。
同僚から「昔から偉い人が髭を生やすんだ。君はいつから偉くなったの」
どこにでも嫌味な人はいるものです。
「偉くはないけど頭のてっぺんが寂しいから生やしているのだよ」
紆余曲折はありましたがこんな感じでそれ以来、ハゲ問題は収束。
今では風呂上がりも楽だし、朝起きてもこのまま、散髪代もかからないし良いことずくめだと思っています。
現在、私は70過ぎのおじいちゃん。
冬は少し寒いのと頭の怪我には要注意。
でも、そんなハゲを今では謳歌しています。
完
こころの水先案内