こころの止まり木 3 田中珈琲
京都今出川通りに田中珈琲がある。
初めてこの店に入った時、ショーケースに沢山の抹茶茶碗が飾れれていたのが不思議だった。
上の棚を見ると「清水保孝展」のカタログがあった。
この抹茶茶碗、全て京都府無形文化財保持者の清水保孝さんの作品か!
ここではいつも私はモーニングセットのスクランブル・エッグを注文する。
コーヒーはサイフォンなのに何故かとても濃厚。
見ているとサイフォンを何回も何回も異常にかき回せている。
だから濃くはいるのかな。
とにかくサイフォンなのにこんなに濃いコーヒーは初めて。
妻が白玉ぜんざいを注文した。
するとあの抹茶茶碗でサーブされた。
清水保孝さんの。
これには驚いた。
コーヒー屋さんで作家物の陶器で、しかも高価な抹茶茶碗で「ぜんざい」!
作家物の抹茶茶碗は汎用品でも5、6万から10万はする。
いい物だと50万なんて言うのもザラな世界。
しかも保孝さんは人間国宝の清水卯一さんの御子息。
とても贅沢な味わい。
殆どの人、こんな贅沢な「うつわ」で「ぜんざい」が出されているのを知らないだろうな。
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その昔、私が京都の骨董屋さん、「てっさい堂」で初めて手にした「ぐい呑み」が清水保孝さんの薄緑色の酒盃。
今では2個、亀の文様の「ぐい呑み」を持っている。
まさかここで保孝さんの作品に出会えるとは奇遇だった。
京都は何気に深いな!
何度か通う内に、どうしてもこんなに沢山の保孝さんの作品が置いてあるのか気になってお店の人に伺った。
オーナーの義理の父親が保孝さんだと教えてくれた。
これで合点した次第である。