学校生活29 臭い私の作品! 

普通部の会報誌より私の文を抜粋しました

 

私の中学の作品展 臭い!臭い!

 

この学校の労作展(作品展)ほど大規模ではないが、私の出身中学校にも夏休み作品展というものがあった。

 

技術科の教師をしているのに中学生の時は物を作るのが大の苦手でこの作品展は大変に辛いものだった。

 

一年生の時には何を出したのか覚えてもいない。でも、二年生の時は違う。

 

それには臭い思い出があるから。

 

作る物については案外早くから決めていた。

 

釣具を入れて置く箱、いわゆる釣り箱である。

 

釣りを始めた頃は道具もまだ少ないのでお菓子箱で十分だったが、凝り出すといつのまにか小道具が溜まり出す一方。

 

大きめの専用の釣り箱が欲しくなった。

 

お金がに私にとってこの箱ずくりはの出費は痛い。

 

そこで材料費は殆どかからない様に決めた。

 

そこで近所の魚屋に置いてある木箱を頂くことに決めた。

 

魚釣りの箱に魚屋の箱をバラした板材、洒落にもならない。

 

そしてこれが臭かった。

 

この箱には元々魚と氷が入っていたので殆どびしょびしょ。

 

板にしたものを天日で乾かす。

 

すると更にあの独特の魚臭さが当たり一面に漂う。

 

この乾燥作業でやる気を無くした私は結局、仕事を夏休み終了の前日まで伸ばしてしまった。

 

父親は何も言わず何も手伝ってくれない。

 

学校のことには一切、口も手も出さない人だった。

 

夜がふけるとあたりはシーンとしてきた。

 

ノコギリを引く音が憎らしい程によく響き渡る。

 

カンナをかける時にはホッと一息。あまり音が出ないから。

 

みるみるうちに木肌が綺麗な木肌が現れてくる。墨で何か書かれたガサガサの表面から。

 

木は生きているんだなとこの時に改めて感じた。

 

しょぼついた目をさすりながら恐怖の組み立て作業に取り掛かった。

 

そう、釘を打たなければならない。静かに「かなづち」を降ろす。

 

釘はそうやすやすとは打てない。

 

何度かコンコンと静かに打ち続け、ガツンと一発。大袈裟な音が響き渡る。

 

思わず人差し指を唇に当てて「シーッ!」。

 

あたりをうかがう。手に汗をかく。

 

父親にビクビク。近所にビクビク。緊張の連続。

 

でも、完成した時の喜びは格別だ。

 

今でもそのことを鮮明に覚えている。

 

最後に肩掛けの紐をつけたが、塗装までは時間がなかったので、そのまま紙やすりで磨いたものを提出した、

 

勿論、教室で皆に臭い臭いと言われたのはいうまでもない!

 

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作品展は嫌いだった。でも、作品展には感謝している。

 

このような催しがない限り、人は中々、ものを作らない。私の様な者には。

 

だから、我が校の作品展はとても価値がある。

 

PS:何故、昼間に釘打ちをしておかなかったのか?それは夏休みのその他の宿題に何も手をつけておらず、でっち上げるのの夜までかかってしまったから。

 

今に思うとあの時に釘ではなく、木ネジにしておけばドライバーで締めるだけだからよかったと反省している。

 

返却後の作品はかなり後まで使った。その後に何故か父親が箱の周りを緑色にペンキで塗って、長い間使っていたのを記憶している。いわゆるクーラーボックスが世の中に出回るまで。

 

緑色に塗られた魚釣り箱、蓋は木の色そのままで蝶番でパタパタ開け閉めしていた。

 

今はもう無いが、脳裏にはしっかり残っている。