学校生活19 秋葉原
普通部の会報誌より私の文を抜粋しました
(少し加筆しました)
普通部かなりのお年のOBに「これは労作展の技術科の講評ではない。でもとても面白い。こんな教師が普通部にいてもいいかな。」と変なコメントを頂戴しました。
秋葉原のにおい!
久しぶりに秋葉原の空気を吸いに来た。
自分にとってこの街の雑踏は刺激的なのです。
ラジオ・デパートの店を冷やかしがてら覗いて歩くと小さなパーツ屋の奥に懐かしい顔を見つけた。
あのオジサン、まだ現役なのか。
中学から高校の時にはよくこの店を利用したっけ。
中学当時、電気部品が何だかわからずに雑誌でワイヤレスマイクが作りたくて「初歩のラジオ」と言う雑誌を見て部品を集めにやってきた。
私:No.88のコイルください?
おじさんは当時お兄さんだった。
それ何んのこと?
私:雑誌にあったんです。
何作るの?
私:ワイヤレスマイク。ラジオで受信できるやつ。
それなら発信コイルのことだね。
私:???????
何で発信コイルがNo.88コイルなんだ?
結局、わからずにそれを買った。そして他の部品も。
そして、結局、うまくいかなかった。
買ったコイルとNo.88コイルの絵図がいまいち違っていて配線が間違ったいたのかもしれない。
発信コイルとはスーパーヘテロダイン方式のラジオで使うコイルだと言うことが工業高校電子科に進学して初めてわかった、
注:
(superheterodyne) スーパーヘテロダイン電波受信の一方式。到来電波と受信機内の局部発振器の出力とのうなり周波数をつくり、到来電波より非常に低い周波数(455Hz)に変換して、安定した増幅を行なう高感度、高選択度の受信方式。現在のラジオ・テレビ受信機や通信用受信機はほとんどこの方式による。
そしてNo.88コイルというのはある部品メーカーの型番というだけのことで結局、当時のお兄さんが売ってくれた発信コイル(455Hz用)と同じものだった。
そんな苦い経験のちょっぴり悔しかったお店だった。
オジサンの顔は当時とちっとも変わっていない。
この場所はまるで時が止まっているようだ。
次に昔のようにジャンク屋(廃棄部品屋さん)を物色する。
出物はあるかな?何件かジャンク屋を見て回ったが、どこもパソコンのジャンクで溢れている。
ラジオ・デパートの地下に「鈴蘭堂」というケースの専門店がある。
ここに私の愛用のオーディオ・アンプ、「クリス・キット」が売っていた。
クリス・キットについてはこの文書を参照してください。
今は勿論、その影もない。
パソコン以外を見つけるのが難しい有様。結局、目ぼしいものは手に入らなかった。
しからば、お次は秋月電子。
ここはハイレベルの組み立てキットで超有名な店。
昔は信越電子と言ってラジオ少年の人気店だった。
ここのキットは難易度A級。
電子工作の知識のない初心者はお断りなのだ。
私はここでニッカド・バッテリーの充電器キットを購入。
勿論、ケースもスイッチ類も自分で調達しなければ完成を見ることは出来ない。
そういうキットを売っているお店なのである。
更に歩みを進める。
この辺は千石電気と言うジャンク屋さんがあったはず。
お金の無い時によくお世話になった。
おや、店はあったけど立派なお店になっていた。
しかも新品の工具を売っている。
昔は雑然としたあまり綺麗とは言えない不思議なジャンク屋だったのに残念。
千石電気があった横丁を出ると牛丼チエーン店があった。
ここの二階はその昔、「音きちクラブ」と言う何やら怪しげな喫茶店だったのだ。音のキチガイ!
とても薄暗い店で「音きち」と言う割にはJBLのスピーカが裸でなっていただけだった。
しかもここのメニューが怪しい。
ラーメンを注文したら店のオヤジさんは山積みされていたインスタントラーメン(確かピヨピヨラーメン)を無造作に取り上げ袋を破って本体を取り出した。
それを雪平鍋(ユキヒラナベ)に放り込み水を加えて煮込み始めた。
いやはや驚いた。
ラーメンを注文して目の前でインスタントラーメンを作ってもらったのは少なくとも外食では初めてである。
しかも、素ラーメンに海苔一枚だけ。
しかし、そこは秋葉原。
何でもありの秋葉原なのだ。
すぐに気を取り直して、恒例の本日買い物したものの確認を一つ一つ手にとって始めた。
こうして買い忘れたものはないか、うまく安く買えたものはどれか。
この時が自分にとって至福の時である。
そんな昔の思いがつい最近のように脳裏を掠めた。
歩き過ぎたかな。
足はすでに棒のように硬くなっていた。
自分の中には趣味のサイクルの様なものが存在する。
あるときはオーディオ、そしてある時はアマチュア無線。
しかし、しかし、これは決して同時進行しない。
もっともっと自分の中で色々な事へのサイクルが存在するが、こと電気関係ではこの二大サイクルが存在する。
こういうサイクルのことをエッセイストの三浦淳氏は「マイ・ブーム」と名付けた。
中々うまいネーミングだな。
人によっては一生に一つの事をやり遂げられる集中力を持つ事が出来るが、マイ・ブーム型の人の方が人口比が多い様な気がする。
さて、君たちはどちらのタイプかな?マイ・ブーム型には外的刺激が必要だ。
自分にとっての外的刺激・・・それは我が校の展覧会なのである。
「紙漉き」が出ると自分でもやりたくなる。
「燻製(くんせい)」が出るとチャレンジ。
常にこの労作展(作品展)は自分にとって重要外的刺激。
君たちにはどうだろうか?自分の仲間の作品を見て大いにやる気を出した人も少なからずいるのではないか。
労作展は参加することに意味があるのは勿論、他人の作品を見たり触れたりしてその人の考え方見方に触れるとても大切な機会だ。
そう、労作展は相互刺激のばであるのだ。だからこの学校を卒業しても見にきて欲しい。
後輩の作品を。
これからも物作りを忘れないで欲しい。
在校生は人に見られる事を常に意識した作品作りに励んで欲しい。
さて、来年は私にどんな刺激をくれるのかな。