目の前のひとりの人にすべてを捧げたい | EQWELチャイルドアカデミー京都六地蔵/京都伏見教室

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京都市伏見区、宇治市六地蔵で「心の子育て」を掲げて幼児教室を開いて25年目になります。以前の記事から人間学をテーマにしたものを抜粋して投稿いたします。皆様の人生や子育てのお役に立てば幸いです。本田望結ちゃん・紗来ちゃんは当教室の卒業生です。


(10年前の過去記事です。)

3月のことですが、以前当教室に通ってくれていたSくんがお母様と一緒に訪ねてくれました。4月から慶応大学医学部に入学されるということでした。

 

1998年1月に京都桃山教室が開校した時、11名の生徒でスタートしたのですが、Sくんはその時のメンバーでした。学年は年少さんだったと記憶しております。お父様の転勤で神奈川県に引越しをされるということで、小学1年生になる前に他の教室に移室されました。

 

お母様も本当に素晴らしい方で、厳しさの中に愛がある、という感じでしっかりと躾をされていました。私も教室を始めて間もない頃で、Sくん親子から本当に多くのことを学びました。そのお陰で今日の当教室があるといっても過言ではありません。

 

Sくんはいつもほんわかして、周りを和ませてくれるタイプでした。「もじ」や「かず」といった取り組みもさることながら、Sくんが得意なのは何と言ってもイメージトレーニングでした。

七田眞先生の著書には右脳の驚くべき能力について多くの事例が記されていますが、Sくんはそれらを当たり前のようにこなしていました。イメージの世界に入ると10分も20分も浸り切り、いつも心から楽しんでやってくれました。

 

ある時、幼児用の絵本を分厚い封筒で完全に密閉して、その中身をSくんに当ててもらう取り組みをしました。まずイメージで小人さんになってもらい、封筒の中に入ってもらいました。(フライング・イン)すると何やら色んなイメージが見えるらしくてその様子を楽しそうに話してくれるではありませんか。私も大興奮し、Sくんがイメージの世界から現実に戻った後に見て来た物を絵に描いてもらいました。封筒に入れた絵本はバスが出てくる乗り物絵本だったのですが、その中の1ページにバス停の絵がありました。すると、なんとSくんは見事にその絵を描くではありませんか。バス停に書いてある文字(地名)もそっくりそのままでした。これには私も驚きました。右脳の驚異的能力を疑っていたわけではありませんが、まさか自分の教室で目の前で目撃するとは夢にも思っていませんでした。Sくんに出会ったことでそれ以降確信をもって右脳教育に取り組むことが出来ました。

 

その後、Sくんは慶応の幼稚舎(小学校)に進学したのですが、入学試験の時も本人は全く遊びに行くと思っていて、完全にリラックスして楽しんで遊んできたようでした。ですから実力をすべて発揮して当然のように合格しました。これはまさに右脳の力だと思いました。すなわちイメージの中で遊びながらあらゆることを実現していくのです。Sくんにとって必要なものが自然に引き寄せられて来る、という感じです。

 

しかしながら、ほんわかして癒しの雰囲気を醸し出していたSくんは慶応の幼稚舎でいじめにあっていたそうです。お母様も一時期悩んでいらっしゃったようですが、母子でその時期を乗り越えて行かれたようです。彼が醸し出す雰囲気はまさに「愛」でしたので、小学校受験で心が荒んでしまった周りの子の格好の餌食になってしまったのでしょう。Sくんはそんな中でも無言で周りの子を愛していたのでしょうね。

 

小学校時代に「円周率を求める論文」を執筆したり、中学・高校時代は弁論大会等で賞を取ったり、生徒会長を務めたりしたそうです。大学進学に際しては理工学部の先生から研究者にならないか、というお声もかかったそうですが、Sくんは敢えて最難関の医学部を目指したそうです。その理由を尋ねると、Sくんはこう答えました。

 

「僕は目の前のひとりの人に、自分のすべてを捧げることが出来る道を選びたいのです。だから、将来は研究者ではなく、臨床医になりたいのです。」

 

私はSくんのこの言葉を聞いて思わず胸が熱くなってしまいました。目の前の人を愛して、大切にしていく…。これはごまかしのきかない道です。才能あふれ他の道からも引く手あまたの中で、あえてその道を選んだSくんに私は心の中で拍手をしたのでした。