『印象派モネからアメリカへーウスター美術館所蔵』の感想です。

 

この展覧会は、モネ「睡蓮」を美術館として最初に購入した(最初に価値を見出した)ウスター美術館のコレクションです。本国フランスよりも早く印象派の価値を見出した「アメリカ」に重きが置かれています。

そのため今回公開された作品の多くは、フランスの印象派作品ではなく、本国フランスを離れた作品や印象派の影響を受けたアメリカ、ドイツ、日本などの画家たちの作品です。

1870年代に起こった芸術活動「印象派」の見たままを描く、戸外の自然な光に輝く一瞬の情景やキラメキを明るい色調で描き、スピード感や躍動する心を荒い筆跡を残すことで表現する手法が、フランスから世界へ広まっていく過程を見ていくことができます。

 

お気に入りの作品を紹介します。

 

 

  クロード・モネ「税関吏の小屋・荒れた海」

高い地点から小屋と海を見渡す構図です。一つ一つの波がたっぷりの絵の具で描かれていて、波の重さ・風の勢いを感じます。独特の色彩で薄暗い海に太陽の光が反射している様子に強烈なインパクトがあります。

 

クロード・モネ:印象派を代表する画家の一人。印象派の由来となった「印象・日の出」。自然の光を様々な題材で描く連作「積わら」「ルーアン大聖堂」。晩年のジヴェルニーを舞台にした「睡蓮」等が代表作。

 

 

  カミーユ・ピサロ「ルーアンのラクロワ島」

水面への光反射はキラキラゆらゆらして、「印象派」らしい作品です。ピサロの柔らかくふわっとした優しさが絵に表れていて好きですね。

 

カミーユ・ピサロ:印象派の一人で、農村や風景がを優しいタッチで描いた作品が多い。モネ、ルノアール、セザンヌ、ドガ、シスレーたちと交流を持つ。彼らよりも年上で柔軟で温厚な性格のため、若い画家たちを励ましたり、彼らの技法を取り入れるなど、「印象派のお父さん」と言われ尊敬を集めていた。

 

 

 

  メアリー・カサット「裸の赤ん坊を抱くレーヌ・ルフェーヴル」

カサットの描く子供画は人気があるでしょう。柔らかい肌や母親と子供の温かいぬくもりを感じる絵です。

 

メアリー・カサット:アメリカの画家・版画家。印象派のドガやピサロと交流をもつ。母子の絆を描きながらも、意思のある女性を描いている。

 

 

 

  黒田清輝「草つむ女」

日本人も印象派の影響を受けています。

明るい色調のフランス農村を描いた作品。フランス留学中に印象派の技法を身に付けた。絵の中に枠のように配置された細い木や、畑の盛り土ラインがリズミカルな印象です。

黒田清輝:日本の洋画家。代表作「読書」「智・感・情」「湖畔」

 

 

 

  クロード・モネ「睡蓮」

 

 

 

この展覧会の目玉の一つです。睡蓮の葉や花と、池の水の境目がはっきりせず、全体として一体となって溶け込んでいくような絵です。注釈には「抽象画としての一面も見られる」とのこと。

 

モネの作品を見ていると、見たままを描く、戸外の自然な光に輝く一瞬の情景やキラメキを明るい色調で描く、自然の中で心で感じたきらめきや躍動する心を自分で感じたままに描く姿勢そのものが「印象派」のように思います。

色彩や描く対象や、描き方ではなく、その精神が「印象派」と呼ばれ、アメリカに渡り世界へ広がっていったのしょう。

 

※画像はパンプレットからお借りしました。