母はまだ未婚であった若い頃、職場の催しで
「そうめん流し」に行ったという。

「涼しくてねえ、美味しくてねえ、楽しかったよ」

何事かあれば自慢する母が羨ましくて、
(いつか、私も行っちやる)
と幼い頃から願っていた。

そのチャンスが、ようやく来たらしい。

梅雨の晴れ間に恵まれた当日、「チロルの山男」
やら「アブドラ・ザ・ブッチャー」やら「ねずみ男」
と化した男性陣と、
♪お洒落娘はよく喋る~♪
の歌のような「踊り上手なヤマガラ娘」たちとなった
女性陣と共に、生まれて初めての「そうめん流し」に
でかける事ができた。

(おお、そうめんが流れてくる!)←当たり前だが…

そうめんの漬け汁に梅干を感じながら、注文した
オムスビも啄ばみつつ、日陰で食欲を満たした。
(これがそうめん流しなのね)
感動を胸に秘め、その後クレープを食べ、途中休憩
でもアイスを食し思った。
(帰ったら、母に自慢しよう)

他人の楽しみには興味がないらしい母は

「あっ、そう」
という反応で終わった。
だが私は満足である。

何事も体験に勝る知恵はない。一つ利口になれた自分を褒めてやろう。