『この作品はフィクションです』



今から18年前‥‥


私は毎日が荒れてた。


建築の試験もうまく行かず、アトリエでも中々うまくいかなかった。


その前の年に母親を亡くし、毎晩夜遅くまでお酒を浴びるように飲んでた。

ビールの缶はすぐにゴミ袋いっぱいになり、

捨てに行くのが面倒になり、家に溜まる一方だ。


昔から顔だけはいい為、女には苦労しない。


顔だけを求める女がいくらでも寄ってくる。


女とはそんなものだ。


顔さえ良ければ、愛だの恋だの付け加えてくる。


私は肌の温もりさぇ貰えればそれでいい。


女とどこかへ行くなど、時間の無駄、時間が勿体ない。




「お前たまにはゴミ捨てろよ。俺が手伝ってやるよ」

近くにすんでる兄がたまに家に来る。


2歳年上で、面倒見のいい兄だ。


「俺、彼女出来たんだ。とても可愛い子なんだ。今度会ってみてよ。」


「あぁいいよ」


私と違い兄は真面目で、常に親の言うことを一途に聞いてきた兄。


そんな兄は税理士で、私と違い女癖も悪くない。




それから数日後、


「はじめまして。」


兄の彼女が現れた。


笑顔で挨拶をしてきた。



頬が赤く柔らかそうで、

仕事帰りなのかスーツを着てる。

目は垂れ目で、唇はふっくらしてる。


少しびっくりしたのは、兄の彼女なのに若い。


年は19歳だという。

兄は今年30歳になる。



それから私達は、よく3人で会うようになった。



食事したり、スポーツをしたり、買い物をしたり、旅行やプール‥‥


はじめて女性と外に遊びに行くという事を覚えた。



とても楽しかった。もっとこんな時間が続けばいいと思ってた。


それが、私の苦しみの始まりとは知らず、じわじわ、私の胸を締め付けていく何かを‥‥



感じる事がまだ出来なかった。

『この作品はフィクションです』


妻の長い髪を乾かしながら

色々考えてた。


髪が手の中でまとまったり、散らばったり‥‥


出会った頃は、今と同じ長い髪だった。

しかしある日突然彼女は髪を切った。



「短いと子供っぽいよね?」


車を運転しながら彼女は言った。



何もしなくても子供っぽいのに、更に子供っぽくなった。



妻が今の状態になったのは、もう10年も前だ。


しかし私たちは結婚して9年。


だから妻は私と結婚したのは多分わかってない。


反対はあった。


私の父だ。


しかし、結婚した。


その反対した父はもうこの世にはいない。




5年前に、病で亡くなった。


辛い事が続き精神的にも追い詰められてたのだろぅ。

最後の方は、既に自分を見失ってた。





「あの子は呪われた子だ。生きていてはならない‥‥」


最後の言葉だ。
『この作品はフィクションです』



階段から昇った。


何故エレベーターがあるのに階段を使うのかと言うと、


妻が、

「私は、なるべくエレベーターもエスカレーターも使わないの。

だって、エレベーターを使うって事はそれだけ運動する機会が減るって事よ。

いつまでも痩せてたいんなら、小さなとこから努力しなきゃ
」


短いショートヘアの妻が、笑いながら言ってた。


妻は、少し生意気で、でも確かにそうだなと思うような事を言う。




『502号室』


この病院で一番広い個室だ。


重い扉を開けると、女性が座ってた。


長い髪は、くしゃくしゃで、


何かの実験に失敗いたみたいな頭だ。



そして目を大きく見開きながら、

この人は誰だろうという顔をした。

しかし、すぐ誰かわかったみたいで、微笑みながら急いで、

私のところに来た。



しかし、床がすべりやすいのか、靴を履かずに走ったからなのか、

こけてしまった。



昔から足が弱いのか、極度の運動音痴のせいかよくこける。


起き上がり、私に抱き着いてきた。


細い腕は、私の体をこれでもかと言わんばかり締め付けた。


一週間ぶりに会えたのが嬉しかったのだろぅ。


そう彼女が私の妻だ。


この病室は妻の為に特別にリフォームした。


壁は、真っ白壁ではなく、ややピンク色の壁に。


ソファーにテレビ、冷蔵庫、そしてお姫様が寝るようなベッド。

お風呂もトイレもあり、

ここしか見なければ、病院とは思えないほどだ。


ベッドには少し古いパンダのぬいぐるみに、ソファーには、真新しいテディベア。


二つとも、かなり大きい。

まず、彼女をソファーへ座らせ、お風呂にお湯を入れた。


乾燥させたバラの花びらを散らしておいた。

10分もすれば、いっぱいになるだろぅ。



そして、彼女の服を脱がしてお湯に入れてあげた。


バラの花びらを一枚一枚拾う事に熱中してて、


先月まで遊んでた、小さいアヒル達はどうやら、しばらく用済みらしい。


髪を丁寧に洗ってあげた。


長い髪なので洗うのも一苦労だ。