マラソンなど極度に疲労する長時間の運動時に脳の貯蔵エネルギーであるグリコーゲン(糖質)が減少し、疲労をもたらす新たな原因となっていることが、征矢(そや)英昭・筑波大教授のチームによるラットを使った実験で分かった。疲労を予防する運動やサプリメント開発につながる成果として27日の英科学誌ザ・ジャーナル・オブ・フィジオロジーに掲載された。



 研究チームはラットをランニングマシンで2時間連続して分速20メートルの速度で走らせる実験を行った。疲労したラットは低血糖化が進み、筋肉と肝臓でグリコーゲンが激減した。ラットの脳を調べると、脳の疲労を引き起こしグリコーゲンを分解する神経伝達物質(セロトニン)が増えた一方、運動に関係する部位(海馬など)のグリコーゲンは約50%減った。



 従来、長時間の運動による疲労の原因は、筋肉のグリコーゲンの減少と考えられていた。今回、セロトニンが引き金となってグリコーゲンを減らす仕組みと脳内のグリコーゲンの減少も深く関与していることを初めて実証した。



 征矢教授は「脳のグリコーゲンを高めたり、うまく利用できれば長時間の運動と勉強による脳疲労を軽減できる」と話している。



【安味伸一】

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