「もう!遅いんだもん!待ちくたびれたよ!」
そんな顔つきだった。
お互い、もうすぐお別れだと悟った。
「てんちゃん!記念写真撮ろう!ツーショットだよ!」
私の指にしがみついているてんてんがニヒルに笑った。
てんちゃん、本当によく頑張ったよね?
凄くえらかったよ!!
いっぱい撫でて、いっぱいキスした。
母にも撫でてもらって、「えらかったね~」と言ってもらった。
三人家族だった。
写真を撮りながら、色々と話しかけた。
かわいいね~~!てんちゃん!!
大好きだよ!!
この後だった。
抱っこの居心地が悪いのか、てんてんは私の手のひらから出ようとした。
どうしたの?
何して欲しいの?
次の瞬間、てんてんは私の手の中からジャンプした!
痙攣?!
大変だ!!!!
てんてんはソファーのクッションの間に落ちていた。
慌てて、拾い上げると
てんてんは奇妙な格好をしていた。
え?
このポーズって??
もしかして滑空なの??
てんてんは早くから白内障になり失明した。
だから、モモンガなのに飛ばせたことがなかった。
てんてんはちっとも苦しそうじゃなかった。
「てんてん!!飛んだの?飛んで見せてくれたの?」
「凄いよ!!凄いジャンプだったよ!!」
てんてんはまだまだという表情を見せた。
私の手のひらの上で、両手脚をピンと張り、皮膜を広げた。
そしてシッポをブン!と上にあげ、ブンブンと回し始めた。
まさしく、フクロモモンガの滑空ポーズだった。
もしかして、てんてんは夢の中で飛んでいるのかも?と思った。
だから「凄いね~。今度はどこ飛んでるの?気持ちいいね~!」
するとてんてんの声が聞こえた。
「何言ってるの?早く写真撮ってよ!」
え?あっ。そっか!!
わかったよ!!
私は携帯のカメラを向けた。
これがてんちゃんの滑空ポーズ。
てんちゃんは私に見せるために5回も披露してくれた。
滑空ポーズをするたびに、シッポは威力を増し、涼しい風を運んでくれた。
最後の最後に
てんてんからこんな素敵なプレゼントをもらうなんて、夢にも思っていなかった。
涙が溢れた。
「ありがとう!もうしなくていいよ!てんてんの滑空、ちゃんと見たよ!」
ずっとずっと、てんちゃんを一度も飛ばせてあげてないことを気にしていた。
モモンガなのに皮膜がなんのためについているか、この子は知らないんじゃないだろうか?
ってずっと思っていた。
体を拭くときに、皮膜をビローンと伸ばして
「てんちゃん、これな~んだ?」っていつも聞いていた。
なんて失礼なことを聞いていたんだろう?
てんちゃんはちゃんと使い方を知っていたんだ。
滑空の練習をさせてあげなかったのは私だったんだ。
目が見えなくたって、嗅覚と聴覚は立派にあったんだ。
きっと飛べたんだね。
最後にてんてんはすべての力を私のために使ってくれました。
滑空の後、穏やかな時間を少し過ごして、
てんてんは最後に雄叫びをひとつあげて、旅立ちました。
心臓が停止する痛みだったのか、私へのあいさつだったのか、
力強い雄叫びでした。
てんちゃんの魂。
まだ、側にいてほしいから。
てんちゃんの雄姿を人形にしました。
背中にてんちゃんを乗せて。。。。
いつでも、あの世とこの世を行き来できます。
お顔はてんちゃんそっくりです。
昨日は滑空ポーズしか作れなかったけど、
これから、かわいかったてんちゃんモデルを沢山作ろうと思います。
今朝、サスケとさくらが眠っている同じ場所に埋葬しました。
サスケとさくらと一緒に、きっと得意げに滑空しているんだろうな。
てんちゃん。
生まれ変わったら、必ず、また私の子になりなさいね。
もっともっと楽しいことしようね!
私もてんてんもとても幸せな日々だったと思います。
お店にてんてんにわざわざ会いに着てくださった方。
「また、会おうね!」そうてんてんと約束してくださった方。
てんてんは約束を守れなかったけど、
てんてんは人形になって、いつでもお店にいますからね。
また、会ってやってくださいね。
大勢の方々に愛情を注いでいただいたてんてんは本当に幸せでした。
皆さん。ありがとうございました。