微動だにしない心 | 工藤 勝己オフィシャルブログ Powered by Ameba 心かさねて

工藤 勝己オフィシャルブログ Powered by Ameba 心かさねて

2021年 5月 6日 『伝わる文章教室』初版発行
2024年 1月 9日 重版 4刷発行
2023年 5月 1日 『心をつかむ文章講座』初版発行
2023年 7月 24日『合格論文の極意』初版発行
2024年 8月 21日 重版 2刷発行
2024年 8月 19日『面接合格完全攻略』初版発行

その日の気分によって

お気に入りのものを選び

 

コーヒーカップを

食器棚から取り出す

 

休日の朝のルーティン

 

スタバの豆をひいて

津軽金山焼のカップで飲む

香り高いコーヒーは

 

ほろ苦い魔法を

かけられたようで

いとおかし。

 

ワンコの散歩を済ませて

新聞の社説に目をとおし

 

次にめくるのは

いつも投書欄だ

 

長年の習慣とは

不思議なもので

 

紙面をめくる順番は

なぜか決まっている

 

ある日の投書欄に

43歳の女性が書いた

エピソードがあった

 

自らの人生に重ねながら

僕はそれを読んだ

 

少しアレンジしながら

ここに したためたい

 

 

 

 

ショッピングセンターの

駐輪場はいつものように

自転車でいっぱいだ

 

すると

 

中年女性が

やってきて

 

ガチャガチャっと

派手な音がして

 

10台程度の自転車が

ドミノ倒しになった

 

あらら

 

その日は

炎天下だったが

 

その場に居合わせた

私と女子高生は

 

とっさに せっせと

自転車を起こすことに

なった。

 

こういう場面で

私の体はいつも

不思議なほど勝手に動く

 

しかし

 

その女性は

自転車を倒した際に

ケーキの箱を落としてしまい

それどころではない

 

ケーキが無事なのか

そのことに気を取られて

 

倒れた自転車に対し

そして自分に対しても

 

カリカリと嘆き

怒っているように見えた

 

 あぁ もう

 

せっかく買ったケーキが

崩れてしまったショックは

よくわかる

 

大切な人と

食べるつもりだったのだろう

 

けれど

 

自転車を起こしてあげた

私たちに対して

 

「ありがとう」のひと言も

言えないものだろうか

 

いや 感謝のひと言が

あってしかるべきだ

 

私はそう思い

その場に立ちつくしていた

 

その時

 

私と一緒に自転車を起こした

女子高生が思いがけない行動に

出たのだ

 

女子高生は

おもむろに女性に近づくと

 

女性の体が無事かを確認するような

仕草をしたかと思うと

 

なんと今度は

 

小さな手で女性の体を

さするような仕草をして

こう言ったのだ

 

 大丈夫ですか?

 おけがはないですか?

 

優しく気遣いながら

とても心配そうな顔で

 

一方の私はといえば

 

「女性を助けたい」

そんな親切心が

 

いつの間にか

 

「助けてあげたのに」

そんな不満の持ち主へと

変わってしまったのだ

 

女子高生の

他者を思いやる気持ちは

変化することがなかったのに

 

相手の反応によって

ぐらつく私の心

 

相手の反応がどうであれ

決して揺るがず

微動だにしない女子高生の心

 

その違いに気づいた私の心は

大きくブルンと震えて

 

しばらく

その場を動くことが

できなかった

 

最近

 

近頃の若い者は...

そんな言葉に

敏感になっていた私

 

それは私自身が

歳をとった証拠

 

実は若い人たちに

学ぶこともたくさんある

まだまだたくさんあるのだ

 

そう思うと

自分が恥ずかしく

ちっぽけな人間に思えたけれど

 

買いものをしていると

時間とともに

なんだかとても

清々しい気持ちになった

 

買いものを済ませた私は

自転車をこいで

いつもの橋をわたる

 

前のカゴにある

レジ袋の食品が重くて

自転車がうまくこげない

 

橋の向こうにある学校の

生徒だろうか

 

制服姿の高校生たちも

自転車で家路を急いでいる

 

教科書や参考書が

パンパンに詰まったカバンが

前のカゴにあり

 

橋をわたる坂道は

とてもつらそうだ

 

 この子たちに幸あれ

 

私は心の中で

そっとつぶやいた

 

やさしく

川面をなでるように

 

秋を知らせる風が

通り過ぎていった。

 

 

 

 

 思いやりのある言葉は

 たとえ簡単な言葉でも

 ずっとずっと心にこだまする

  (マザー・テレサ)

 

 人を思いやる気持ちのない知性は

 すごく危険な武器なのよ

  (松下 幸之助)

 

 セトモノとセトモノと

 ぶつかりっこすると

 すぐこわれちゃう

 どっちかやわらかければ

 だいじょうぶ

 やわらかいこころを

 もちましょう

 そういうわたしは

 いつもセトモノ

  (相田 みつを)

 

 花は優しい

 見る人を慰めて

 何も見返りを求めない

  (美輪 明宏)

 

 他人と過去は変えられないが

 自分と未来は変えられます

  (エリック・バーン)

 

 運命というのは

 努力した人に

 偶然という橋を

 かけてくれる

  ( 映画『猟奇的な彼女』より)

 

 

こちらの記事も

ぜひ、ご覧ください ↴↴↴