公園のベンチで | 工藤 勝己オフィシャルブログ Powered by Ameba 心かさねて

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2021年 5月 6日 『伝わる文章教室』初版発行
2024年 1月 9日 重版 4刷発行
2023年 5月 1日 『心をつかむ文章講座』初版発行
2023年 7月 24日『合格論文の極意』初版発行
2024年 8月 19日『面接合格完全攻略』発売予定(予約受付中)

ある日の午後

 

公園のベンチで

散りゆく桜を愛でながら

コーヒーを飲んでいた僕 。

 

砂場には

子どもを遊ばせるお母さん

 

そして

 

トンネルや泥団子のようなものを

夢中で作っている男の子。

 

しばらくすると

 

突然、お母さんが怒りだした

早くしなさい!と 。

 

そのやりとりに

そっと耳を傾けてみると

あと5分という約束だったのに

 

 延長、延長

 また延長 。

 

忙しい母親と

遊び盛りの子どもにとって

 

公園の時計は

あっという間に針を進めて。

 

やるべきこと

やらねばならぬこと

やりたいことが

いっぱいあるのに

 

一向に帰ろうとしない息子に

遂に堪忍袋の緒が切れて。

 

 早くっ!

 早くしなさい!

 

砂場に散らかった数々のおもちゃ

シャベル、ダンプカー、ジョーロ

 

その片づけを催促しながら

カンカンに怒っているお母さん

 

怒られるのは慣れているのか

男の子は平然としていて

 

片づけるというよりは

怒っているお母さんを尻目に

むしろダラダラ遊んでいるような

 

そんな感じで

 

人目もはばからずに

声を張り上げるお母さん

 

その顔

ちょっ ちょっと怖い 。

 

そして

 

遠くのほうに目をやると

腰の曲がったおばあちゃんと

小さな女の子が

公園に向かって歩いてくる

 

これから公園で遊べるんだ

そんな喜びが女の子の仕草から

僕にも伝わってきて。

 

軽やかにスキップを踏みながら

女の子はおばあちゃんの先を行く

 

まるでハミングでも

聞こえてくるようだ

 

しかし

 

腰に手をやりながら

度々立ち止まるおばあちゃん

 

それを気づかうように

女の子が走り寄っていく

 

再び歩き出すのだが

女の子との距離はまた

どんどん離れていく

 

その度に

 

サラサラの髪を揺らしながら

おばあちゃんへと駆け寄る

 

そして

 

女の子の口からは

優しい言葉がこぼれる

 

 ゆっくりでいいよ

 

やっと公園につくと

おばあちゃんは僕の隣のベンチに

 

「よっこらしょ」と言って

もたれるように腰かけた。

 

3才くらいの女の子は

それを確認するやいなや

 

ボールが弾むような勢いで

滑り台へと飛んで行った。

 

 

 

 

男の子と女の子

同じ公園にいるはずなのに

 

あまりにも対照的な

光景をつくり出していて

 

神社の掲示板に貼ってある

言葉を思い出した。

 

 子供叱るな 来た道だもの

 年寄り笑うな ゆく道だもの

 来た道 ゆく道 ふたり旅

 これから通る 今日の道

 通り直しのできぬ道

 

たまに訪れた公園のベンチで

こんな語録を思い出すほどに

味わい深いものなのかもしれないと

 

散りゆく桜の花びらに

己の人生を重ねてみた

 

そういえば

こんな詩もあったよなぁ。

 

  95歳の老人の詩

 

 もう一度 人生をやり直せるなら 

 今度はもっと間違いをおかそう

 もっとくつろぎ 肩の力を抜いて

 絶対に こんな完璧な人間ではなく

 もっともっと愚かな人になろう

 

 それほど真剣に思い煩うことなど

 この世には殆どないのだから

 もっと馬鹿になろう もっと騒ごう

 そしてもっと不衛生に生きよう

 

 もっとたくさんチャンスをつかみ

 行ったことのない場所にも

 もっともっとたくさん行ってみよう

 アイスクリームをもっと食べて

 お酒もしっかり飲んで しかし

 豆はそんなに食べないでおこう

 

 もっと本当の厄介ごとを抱え込み

 頭の中で想像してしまう厄介ごとは

 できるだけ減らそう

 もう一度最初から

 人生をやり直せるのなら

 春はもっと早くから裸足になり

 秋はもっと遅くまで裸足でいよう

 

 もっとたくさん冒険し

 もっとたくさんメリーゴーランドに乗り

 たくさんの夕日を眺めて

 子供らとたくさん真剣に遊ぼう

 

 だが、見てのとおり私は

 もうやり直しがきかない

 人生をあまりにも厳格に

 私たちは考え過ぎていないだろうか

 自分に規制をかけて他人の目を気にし

 起こりもしない未来を思い煩っては

 クヨクヨして悩んだり構えたり

 時には落ち込んでみたりしているけれど

 

 もっとリラックスしよう

 もっとシンプルに生きよう

 たまには馬鹿になり無鉄砲なことをして

 人生に潤いや活気、情熱や楽しさを

 取り戻そう

 人生は完璧にはいかないけれど

 だからこそ だからこそ

 生きがいがある。

 

真偽のほどはわからないのだが

マネジメントの父と言われながら

95歳で逝った晩年のピーター・ドラッカーが

書いたものだとも言われている。

 

示唆に富んだ言葉で綴られた

95歳の老人の詩を反芻しながら

 

隣のベンチで微笑んでいる

おばあちゃんの横顔を

もう少しだけ

眺めていたいと思った。

 

 

 

 

 人生は短い

 それでも人は退屈する

  (ジュール・ルナール)

 

 人生には良い日もあれば

 悪い日もある

 大切なのは精神的に

 成長していくことだ

  (フロイド・メイウェザー)

 

 40、50は洟垂れ小僧

 60、70は働き盛り

 90になって迎えが来たら

 100まで待てと追い返せ

  (渋沢 栄一)

 

 むしろ「成功は失敗のもと」と

 逆に言いたい

 そのほうが人生の面白さを

 正確に言い当てている

  (岡本 太郎)

 

 だれにだってあるんだよ

 ひとにはいえないくるしみが

 だれにだってあるんだよ

 ひとにはいえないかなしみが

 ただだまっているだけなんだよ

 いえばぐちになるから

  (相田 みつを)

 

 夫婦生活は長い会話である

  (ニーチェ)