ランチを外食すると、もはや「ワンコイン」なんて言葉はどこへやら、

そば屋でさえ千円札でお釣りが返ってこない時代になった。

この異常な物価高に加え、税金や社会保障費、公共料金は上がる一方。

少子化が進むわけだ。

先日、「サラッと一句!わたしの川柳コンクール(第一生命)」で

上位に選ばれた句の多くもまさにそんな時代を反映したものが多かった。

ちなみにベスト3には・・

増えるのは 税と贅肉 減る贅沢

  物価高 見ざる買わざる 店行かず

 

川柳は本来、チクッと風刺を交えて笑い飛ばすものだが、もはや直球。

物価高の切実さを剛速球でぶつけて、もはや叫びだ。

その昔、主婦たちがおしゃもじを模したプラカードに「値上げ反対」を掲げ、

国会前へデモ行進したことを思い出す。

あの時代と同じ切実さが現代にも押し寄せているのを怖いほど感じる。

一方で、裏金問題以来の政治家の言動を見ているとやりきれない。

もはや国民が次の選挙で思い知らせる以外ない。

 

川柳に見えるもう一つの切実さは、高齢化社会とデジタル化の波。

  どう生きる AIに聞く 我が老後

  PayPayを 覚えた父の 無駄遣い

  パスワード チャンス3回 震える手

  地図アプリ 見ながら迷い 人に聞く

 

いずれもわが身に覚えのあるような「あるある」場面だ。

デジタル社会の変化が余りに激しく、アップアップする人がどれほど多いか。

ため息が出るニュースばかりで、テレビを消し、

何かいいニュースはないものかとベランダに出て目の前を見ると、

マンション私有地のビワの木が実をたわわにつけ、

いかにも熟れ頃。

もうそんな季節か、とさっそく、高枝切りばさみを手に“収穫祭”。

隣近所におすそわけしたあと味見してみるとほの甘く、ようやく気分も晴れてきた。     

思えばこのビワの木、隣の息子が幼い頃、ビワのタネをベランダから落としたものが、いつの間にかスクスク育ち、20年後の今、10メートル近い大木になったもの。

 

ビワは落下した種子からすぐに発芽しやすいと言う特徴があり、

日本の時期的な条件と重なって、他の果物と比べて発芽率が特に高いそうだ。

しかも、ビワは栄養価が優れていて、

特に葉の部分は古くから薬としての効用が言われてきた。

中国ではその昔、ビワの葉を求めて、病を患っている人たちが

ビワの木がある所に集まり行列が絶えなかった。

ビワは医者いらずの果実・・と伝わる。

食べた後のタネを見ながら、

一粒のタネから多くの恵みを他の生き物に与えてくれる植物のなんと偉いことか・・と、しみじみ感謝した次第。

 

  枇杷の種子しばらくは手に乗せしまま  佐藤鬼房