井戸に満ちる水 | ココイチ版!

井戸に満ちる水

創り出す、というのは簡単にできることではなくて、集中して対話を繰り返して、どうにか絞り出してようやくはじめて為し得ることだ。


なにか作品に限らず、自らの言葉や感情も同じこと。

訓練を怠っているうちに、湧き出る感情を表す言葉が見つからなくなる。次第に、感情さえも鈍化して。


触れるもの全てになにかが宿り、あらゆる力の源泉になっていた。宿るものの力を少しずつ感じ取れなくなったときには、いずれ甦るだろうと楽観した。しかし受け取れる光は弱まり、多くの力は失われて脱け殻になっていく。


渇いていく。
からからに。


水分が抜け落ちて、見る間に皺だらけの脱け殻になっていく。


かつては溢れだし満ちていたなにかがいまは損なわれ、容れ物だけが形残り、隅々まで埃が蔓延った表面は、その深層までも乾ききってカラカラになっている証しとなっている。


渇いた。



そろそろ、私の小さな井戸に清らかな水が必要だ。わずかでもいいから。

渇いた。

渇いた。