おととし癌で亡くなった親戚のおばは、

長い間、お能を習っていたのだが、

股関節を傷めてやめてしまったのを、思い出した。

あんなに熱心に励んでいたお稽古事を断念せざるをえなかったのは、

またしても、地獄の一丁目、股関節の奴が悪さしたからだったのだ。

なんなら、能楽堂のふたつやみっつ、

簡単に建てられるくらいのとんでもない大金持ちのおばだったのに、

地獄の沙汰も金次第というわけにはいかなかったのかと思うと、

空しいやらなんやら、複雑な気持ちになる。