今年の12月1日に、クレジット取引に関する規制が変わります。クレジット会社は過剰与信を防止するために、契約者の「返済可能見込額」を調べ、その額に基づいて、クレジット契約の上限額を決めなくてはなりません。クレジットカードのショッピングの枠(極度額)も原則、このルールで決められるようになります。さて、あなたには、どの程度の枠が設けられるのでしょうか?
年間の返済可能見込額が基準に
クレジット取引に関するルールを定めているのは、割賦(かっぷ)販売法という法律です。その改正法が12月1日に施行される予定で、その時点から、
クレジットカードのショッピングの極度額を決める、新しいルールがスタートします。
そのルールの原則を大雑把にいえば、個人の年収や預貯金額から、他の債務の返済に当てる金額や生活費を差し引いて、1年間に返済できる額を算出、その
「返済可能見込額」の90%に当たる金額(以下、法定上限額)を超える極度額のカードの発行を原則として禁止するというものです。発行済みのカードの極度額を増額する場合も、法定上限額を超えて引上げることはできません。
これを式で示せば以下のように表せます。0.9を掛けるのは、リボの場合は返済が進めば空枠ができ、極度額以上に利用可能なため、極度額を返済可能見込額よりもやや少なめに見積もるためです。
(年収+ 預貯金- クレジット債務- 生活維持費)×0.9<極度額 ⇒カード発行・増額禁止
クレジット債務は他社分も合算
年収は自己申告でよく、源泉徴収票などの証明書を提出する必要はありません。預貯金も自己申告でよく、残高証明書などは不要です。
預貯金額はプライバシーにも関わりますので、十分な極度額が確保できるのであれば、あえて申告しなくてもよいでしょう。
クレジット債務は今後1年間に返済する予定の額のことです。自動車や家電製品などを購入する際に結んだ分割払いのクレジット契約(個別クレジット、個品割賦)とクレジットカードのショッピングが対象になります。ショッピング債務はリボ・分割払いのみをカウントし、マンスリークリア(翌月一括払い)は含みません。
複数の会社にクレジット債務がある場合は、すべて合算します。クレジット会社は今後、信用情報機関に顧客ごとの年間請求予定額を登録するので、それを合計すれば他社分も含めた返済予定額を把握できるようになります。
ローンの債務に関しては、カード会社は信用情報機関を通じて他社の債務まで調べる義務はありません。自社のローン債務を勘案するだけでよいとされています。
生活維持費は、住宅ローンの返済や家賃の支払いの有無と世帯人数ごとに、別表のように法令で定められています。ただし、都市部と地方部では物価水準も異なるため、利用者の居住地によっては、この金額を減額することができます。生活保護制度の「3級地-1」に該当する地域は90%、「3級地-2」に該当する地域は85%の額を生活維持費とすることが認められます。
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4人世帯以上
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3人世帯
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2人世帯
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1人世帯
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住宅ローン返済
家賃支払いなし
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200万円
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169万円
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136万円
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90万円
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住宅ローン返済
家賃支払いあり
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240万円
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209万円
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177万円
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116万円
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従来どおりの極度額水準は維持可能
では、このルールに沿って、実際の極度額がいくらくらいになるかを試算してみましょう。たとえば、夫婦2人で賃貸マンションに暮らしている年収400万円の人がクレジットカードを申し込んだ場合を考えてみましょう。預貯金は100万円。オートローン(クレジット)の返済が年間60万円あるとします。
年収と預貯金を足した500万円から、クレジット債務60万円と生活維持費177万円を引くと263万円。これに0.9を掛けた236万円が、ショッピング枠の上限になります。
なお、ここでいうショッピング枠は、リボや分割払いの利用限度額です。マンスリークリアの枠は規制の対象にはなりません。ただ、マンスリークリアの枠とリボ・分割の枠を一体管理しており、それぞれの極度額を設けていないカード会社もあるので、ショッピング枠の全体がこの規制の影響を受ける可能性もあります。
専業主婦は夫の同意なしでも夫の年収を合算できる
このシミュレーションからもわかるように、新しいルールはそれほど厳しい規制ではありません。ただ、
専業主婦やパート収入しかない主婦などは、希望する極度額が確保できなくなるおそれがあります。
そこで、改正割賦販売法は、年収103万円以下の主婦については、主婦本人が世帯主の年収・預貯金を申告するだけで、その額を合算できるようにしています。ただし、年収を合算する場合は、クレジット債務や生活維持費も世帯単位でとらえます。
年収が103万円を超える場合は、共稼ぎ夫婦のためのルールが適用されます。配偶者の同意があれば、配偶者が自己申告した配偶者の年収・預貯金を合算できるのです(クレジット債務も生活維持費も世帯ベース)。
学生や年金暮らしのお年よりの場合も、世帯主(二親等以内の親族)の同意があれば、世帯主の申告した世帯主の年収・預貯金を合算することが可能です。
極度額の一時的な引上げも可能
新しいルールには例外もあります。極度額が30万円以下のカードなら、カード会社には返済可能見込額を算定する義務は生じません(ただし、自社50万円、他社含め100万円を超えるリボ・分割払いのショッピング債務がある場合は義務が発生)。
また、
海外旅行や結婚式や引越しの費用を支払う場合などは、法定上限額を超える水準まで極度額を引上げることができます。ただし、一時的な引き上げは3ヵ月以内で現在の極度額の2倍までしか認められません(臨時収入や生命や身体に関わる緊急性のある場合は除く)。また、極度額を引上げる目的や臨時収入の額、カードを利用する加盟店などを、カード会社に事前に申告しておく必要があるとされています。
複雑な規制なので、なんとなく不安になる人も多いかもしれません。しかし、
一般的なユーザーであれば、カードショッピングの利用可能額が制限されるような規制ではないので、心配には及びません。仮に法定上限額を超えていたとしても、発行済みのカードの極度額が減らされることは、更新時までありません。逆に、極度額が法定上減額まで一気に増えることもないでしょう。
返済可能見込額は自分でも簡単に計算できると思われます。
自身のキャパシティを知ることで、健全なカード利用の目安にしてみてください。