過労死と貧困の時代だった「平成の30年間」vs #メーデー の原点「8時間働けば暮らせる社会」 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 きょうは90回目となるメーデーです。メーデーの起源は、1886年5月1日、8時間労働制実現を要求してシカゴを中心に全米で35万人の労働者が参加したゼネストです。日本の第1回メーデーは1920年5月2日。東京の上野公園に1万人が集まりました。そして1935年の第16回メーデーまで毎年開催されていましたが、戦時体制下で労働組合運動も弾圧され、その後メーデー開催は10年間禁止され敗戦翌年1946年5月1日に復活しました。ですので、もし戦時体制下の弾圧がなくメーデーが開催されていれば、きょうのメーデーは第100回目、メーデー100周年となっていました。こうした歴史からも労働組合運動にとって平和が大切であることがわかります。

 今年のメーデーで最も大事な要求は、「8時間働けば普通に暮らせる賃金、働くルールづくり」です。下のグラフにあるように、日本の男性は週13時間もデンマークやノルウェーより長く働いています。デンマークの1年間の労働時間は、日本の男性のペースで1月から働いたとすると10月頭に到達してしまうので、10~12月の約3カ月間は休暇となる計算になります。いかに日本の男性が長時間労働かが分かるでしょう。

 



 こうした長時間労働なので、必然的に日本の男性の睡眠時間は下のグラフにあるように短くなります。

 



 そして、睡眠時間も十分に確保できない上に、「ジェンダー差別」「性別役割分担」がいまだ根強い日本では下のグラフ群にあるように、家事労働が女性に押しつけられ、日本の女性も睡眠時間が短くなっています。

 



 労働者の5人に1人が長時間労働の日本では、下のグラフ群にあるように、過労死・過労自殺等の件数が過去最悪になっています。

 

 

 



 賃金を見ると、下のグラフ群にあるように、大企業の労働者の賃金も額面ベースで下がっていますし、各国通貨の額面での比較でもOECD加盟国36カ国で賃金が下がっているのは日本だけで、賃下げに連動してGDPも低迷しています。また、実質賃金で見ても日本だけが下がっています。

 

 

 

 

 



 日本は賃金が下がっているだけでなく、下のグラフ群にあるように、税・社会保険料が応能負担(負担能力がある個人や大企業が負担すること)になっていないため、所得再分配が弱く、可処分所得が大幅にマイナスになり貧困と格差が拡大しています。

 

 

 

 



 

 

 


 そして、下のグラフにあるように、今現在でもすべての年齢階層に貧困が広がっています。よく高齢者が得をして若い世代が損をしているかのような「世代間格差」「世代間分断」をあおる言説がありますが、事実は高齢層も若年層も貧困であり、「世代間格差」が問題ではないことがこのグラフでわかります。



 消費税率を3%から5%、5%から8%に上げた結果、下のグラフにあるように家計消費は大幅にマイナスになっています。この上にさらに、低所得者ほど負担の重い消費税増税を今年10月に強行することは許されません。

 

 

 



 下のグラフにあるように、社会保障の財源などは、消費税増税でなく史上最高の利益をあげている大企業や富裕層が応能負担すべきです。

 

 



 税・社会保障の再分配機能を大幅に改善することと、日本の低い最低賃金を全国一律で大幅に引き上げることは急務です。2018年3月期決算での役員報酬額のトップはソニーの平井一夫氏で、27億1300万円でした。これを管理職の年間労働時間(総務省「労働力調査」の2116.7時間)で時給換算すると、時給128.2万円になります。最低賃金761円の1684倍です。

 

 



 今年のメーデーは「令和」なるものの最初の日となりました。マスコミは「平成から令和へ」と何か新しい時代が自動的に始まるかのような大騒ぎをしていますが、最後に「平成」なるものの「失われた30年」を概括するグラフを紹介しておきます。

 

 

 

 上のグラフを見てわかるように、「平成」の30年は、労働者・国民には貧困と過労死が襲い、その裏返しとして大企業と富裕層には富が極端に集中した「失われた30年」でした(※子どもの自殺率については舞田敏彦さんの論考「日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している」を参照ください)。「令和」などに浮かれている場合ではなく、「失われた30年」からの脱却、貧困と格差の解消のためには、すでに指摘したように、最低賃金の全国一律での大幅引き上げと、税・社会保障による所得再分配機能の大幅な改善をはかる必要があるのです。(井上伸)