餓死者を多発させる世界最小の貧困解消支出と公務員数 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 憲法の第15条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と明記されています。


 そして、第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と明記されています。


 ところが、厚生労働省の「人口動態統計」で、死因が「食料の不足(餓死)」とされた餓死者数はこの30年間で1,331人にものぼり、とりわけ1995年から急増していることが分かりました。(▼下のグラフ=「餓死者、バブル崩壊後急増 セーフティーネットの不備映す」産経ニュース2012.2.26 12:56から

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 『東京新聞』(2012年2月24日付)は、「2010年の全国の餓死者は36人で、このうち11人が関東地方の1都6県だったこと」を報道し、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんのコメントをこう紹介しています。


 「都市部は近所付き合いが薄く、隣人の危機をキャッチするチャンスが少ない。それが餓死という形に表れたのだろう。男性は生活の中心が勤め先のため、リストラなどでひとたび『社縁』を失うと、女性より無縁になりやすい。現在の高齢化社会では、よりコニュニティーづくりの大切さが増すのではないか」(※湯浅誠さんのコメントはここまで)


 地域コニュニティーの崩壊や家族機能の崩壊、そして「社縁」との断絶など、「無縁社会化」への警鐘が鳴らされてはいますが、そもそも根本的なところで支えなければならない政府の役割=憲法25条はどこに行ってしまったのでしょうか?


 日本政府は憲法25条に基づいて、すべての国民の生存権を保障しなければなりません。そして、そのためにこそ全体の奉仕者である公務員の働きがあります。


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 上の表は、「貧困を解消するための公費支出」の国際比較です。対国民所得比で見ても、対GDP比で見ても、日本は最下位です。


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 上のグラフは、税と社会保障による貧困改善効果を見たものです。私たちが賃金など市場で得た所得(市場所得)で見た貧困率と、市場所得から税などの負担を差し引き、社会保障によって給付されたものを加えた所得(可処分所得)で見た貧困率をひとつの棒グラフにしています。その差が大きい国ほど、税と社会保障制度による貧困率の改善度が大きい国ということになります。


 上のグラフにあるように、税と社会保障による貧困改善効果は、OECD17カ国平均9.8%に対して、日本は3分の1以下の3.0%と最低です。


 これを受けて、OECDは、日本経済の審査報告書(2006年)の中で、①日本は税・社会保障による貧困率の改善効果が他のOECD諸国と比べると大変小さい、②日本は勤労者世帯への公的社会支出が少なく、社会保障の給付が低所得世帯に集中していない、③日本の貧困世帯は、他のOECD諸国に比べて、税・社会保障の移転は小さな割合しか受け取っていないのに、高い税負担を担っている。所得階層を5つに分けた所得5分位における最下位の階層(最も低所得の階層)が支払った直接税を見ると、直接税全体に占める比率が、OECD平均は4%であるのに、日本では7.4%であると指摘されています。日本の税や社会保障は、「強きを助け、弱きをくじく」ものになっているのです。


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 そして、上のグラフにあるように、労働力人口に占める日本の公務員・公的部門職員数は、OECD27カ国平均の17.9%の半分にも満たない7.9%と断トツの最下位です。人件費も世界最低です。


 今でも日本の公務員数は少なすぎるのです。とりわけ、国民の生活を守るせーフィーネット、社会保障関連で働く公務員が少なすぎるのです。それなのに、野田政権は、国家公務員の総人件費(職員数削減と賃下げ)を2割も削減しようとしています。これでは、現状でも餓死者を多発させるセーフティーネットの不備がますます拡大するばかりです。野田政権は、セーフティーネットなど必要のない「強者」「1%の富裕層」の立場に立って、「ムダなセーフティーネットを担うムダな公務員など税金のムダ使いだから削減してしまえ」と主張していることになるのです。


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)