復興財源は所得再分配機能縮小する消費税でなく巨額の内部留保抱える大企業に震災復興国債引受け求めよ | すくらむ

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 ※全労連の要請書を紹介します。


                               2011年4月14日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
 (緊急災害対策本部・本部長)
 総務大臣 片山善博 殿
                             全国労働組合総連合
                             議長 大黒作治


 復旧復興新法と生活再建にかかる当面の追加要請


 被災された方々への支援と生活再建、被災地域の復興・再生をめざして、「復旧復興新法(仮称)」づくりの論議がはじまっていると聞き及んでいます。被災された方々、被災地域自治体の要望を十分に反映させ、よりよい新法に練りあげていくことが必要です。


 新法のもとで本格化する復興事業と地域再生のとりくみがめざすべき方向は、今回の大震災とその後の事態から教訓を十分に汲みとり、単なる復旧ではなく、災害・津波にも強い街づくりを強力にすすめることです。また、脆弱さが明白となった大企業中心のいびつな経済・社会構造を転換し、地元中小企業、農林畜産・漁業などの振興を基盤とした活力ある地域経済への転換をすすめることです。省エネ・低炭素社会の実現など環境にも十分配慮した地域経済の再生が求められます。そのカギとなるのは、日本の異常な長時間・過密労働を是正し、賃金の底上げをはかることなど、内需拡大を基礎とした健全な地域経済の循環をつくることです。


 社会・経済構造を転換し、明るい日本社会の未来を切り開いていくためにも、今回の大震災で甚大な被害に見舞われた方々への生活保障、支援策が十全に整備されることが不可欠の課題であり、政治に課せられた使命です。それは、復興事業を軌道に乗せ、地域経済の再生を実現する土台でもあります。


 以上の観点から、復旧復興新法の具体化という現段階を踏まえつつ、3月25日に提出した要望書を追加・補強する立場から、以下のとおり新法の基礎にすえるべき要望を明らかにし、その実現を強く求めます。


                    記


 1.災害・津波に強い街づくりとともに、地域住民の要望・意向に基づいた復興・再生事業とすること


 今回の大災害を教訓に、災害・津波に強い街づくりをすすめ、二度とこのような甚大な被害を起こさないようにすることを最優先課題にすることが必要です。


 同時にそれは、住民の強制移住など中央集権的手法ですすめるのではなく、住み慣れた地域で生活を再建し、生き続けたいという住民の願いを基礎において、地域住民自らの話し合いと要望・意向に基づいて民主的にすすめられる必要があります。


 行政・自治組織の再建を急ぎ、市町村単位に止まらず、町内会や集落単位の復興協議会を整備し、住民の意向が反映できる仕組みを構築すべきです。そのためにも、地域コミュニティの維持・再生が不可欠の課題であり、被災者カルテを早急に整備するなど、遠隔地への避難も含め被災された方々の状況を早期に掌握し、応急仮設住宅等への入居にあたっても、抽選ではなく、コミュニティの維持を視点において対策を実施するよう求めます。


 2.津波等のよる甚大な被害を踏まえ、生活と生産の基盤整備は全額国庫負担でおこない、復興の土台づくりに責任を負うこと


 津波等の被害にあった地域では住まいや職場、道路と用水、港湾など生活と生産の基盤が根こそぎ破壊されるなどかつてない甚大な被害となっています。


 したがって、防波堤や防災設備、道路・港湾・河川、生活・農業用水、学校を含む公共施設や医療・介護施設など、生活と生産の基盤となる施設・設備等の整備に関しては、全額国庫負担で実施し、復興の土台を築くべきです。


 震災を契機に新たな地での生活再建を選択された方々にも、被災地域におけると同様の支援が実施されるよう求めます。


 3.道州制等による規制緩和、大企業中心社会の継続という方向ではなく、被災地域の住民の生活再建を第一にして、活力ある地域づくりをすすめていくこと


 素案等の内容からは、新法の描く復興の方向性は必ずしも詳らかではありません。政治や論壇の世界からは、道州制など強権的手法の導入や大規模な規制緩和の主張も聞こえてきます。しかし、それでは今回の大震災とその後の状況が明らかにした日本社会の脆弱性という問題点を克服することはできません。規制撤廃によって生活基盤の整備よりも住民の意向を無視した大規模開発が推進されることになれば、被災地域から人口が大規模に流失し、活力ある地域社会の再生が阻害されることにもなりかねません。


 被災地域の住民の意向に基づく生活再建を第一にした、活力ある地域づくりをすすめるという視点を明確にして、新法と復興計画を策定するよう強く求めます。


 大企業中心のいびつな構造を転換し、地元中小企業、農林畜産・漁業などの振興を基盤とした活力ある地域経済へ転換することを基本にすえ、省エネ・低炭素社会の実現など環境にも十分配慮した復興・地域振興計画を構築し、内需拡大を基礎とした健全な地域経済の発展をめざすことを明確にすべきです。


 4.被災にともない職場や生業を失った方々の就労の場の優先確保など、秩序ある復旧復興事業を推進していくこと


 被災に伴って失業・失職した方々に就労の場を大規模に提供していくことが、地域コミュニティをまもり、復興のテンポをあげるためにも重要な課題です。


 別添の要請書「被災者等の雇用対策の強化を求める追加的要請」で指摘しましたが、①被災者、地元住民、地元企業の優先採用の義務づけ、②公契約法の制定など直接雇用を原則として、適切な賃金と処遇を保障することを明確にした積算単価に基づく賃金単価の明示と全額払い(希望者への即日現金払いを含む)を確実に担保する措置、③復興事業に止まらず、公的就労を大規模に拡大することなどが確実に実施される必要があります。


 復旧復興事業に参画する事業者への規制が重要であり、上記の被災者等の優先雇用や積算単価に基づく賃金の全額払いにくわえ、復旧事業等にかかわった業者には収支報告書の公開と、一定の枠を超える利益については生活再建の基金等への拠出を義務づけ、不当な利潤をうまない仕組みを導入すべきです。


 また、復興事業をみこんだ原材料等の高騰や売り惜しみを未然に防ぐため、物価統制や売り惜しみを防止する措置を発動する用意があることを明確にし、周知すべきです。


 5.被害の甚大さを踏まえ、被災された方々の生活保障にくわえ、生活の基盤を再建する費用を支援する制度を整備すること


 別添の要請書「被災者等の生活支援にかかる追加的要請」に示した当面する生活費(支援金)の支給や被災によって仕事・生業を失った方々などに対する休業補償制度の早急な整備に加え、津波等によって生活基盤のすべてを喪失するなど甚大な被害を受けた方々などに、住まいだけでなく、農林畜産・漁業における基本的な設備や、中小零細企業、商店等の店舗、操業設備など、生活基盤の再建を支援する給付・助成制度を整備するよう求めます。また、マイナスからの出発を回避するため、住めなくなった家屋や自家用車(評価額を上回る改築・修繕費が見こまれる場合等を含む)をはじめ、農林畜産・漁業等と中小零企業・業者における必要な施設・備品などで建て替え・買い替えが必要で、ローンが残っている場合については、一定額まで政府が肩代わりする制度についても検討すべきです。


 ここに言う生活基盤の再建の支援金(仮称:生活基盤再建費)は、現行の支給水準(例えば、被災者生活再建支援法における支援金の上限は300万円)を大幅に上回り、実際にその再建を容易にする水準まで引きあげることとし、新法で措置するよう求めます。全壊や半壊、一部損壊等の評価によって支援の額が著しく異なる点については、実際にその建物等がどの程度使用できるかなどの実態に即した弾力的判断にあらためるべきです。


 今般の弾力運用で労災保険が適用になる事実をひろく周知し、活用を呼びかけるとともに、災害弔慰金等の支給額の引き上げと、年金方式の支給の拡充新設をおこなうよう求めます。保証人要件の撤廃や生計維持者か否かによって額が異なる扱いも是正すべきです。


 6.震災費用の確保は不急の事業の繰り延べや応能負担原則を貫き、消費税率のアップなど所得再分配機能を縮小する増税はおこなわないこと


 被災された方々への手厚い支援と復興・再生費用に関しては、日本経済を守るためにも、消費税率アップはおこなわず、応能負担原則を貫くよう求めます。
 不急の予算の大胆な見直し、法人税率5%減税の撤回、大企業や大金持ちへの優遇税制の抜本的な見直しなどとともに、震災復興国債を発行し巨額の内部留保を抱える大企業等に引き受けを求めることなどによって捻出するよう求めます。

                                         以上