10月11日から5日間、自治労連のILO（国際労働機関）要請団の一員として、国公労連を代表して参加してきました。
スイスのジュネーヴにあるILO本部には10月13日に要請。午前10時半から条約勧告適用専門家委員会に対して、公務職場における非正規労働者の実態と男女格差の問題などを訴えました。
私は、国の行政機関で働く非常勤職員が14万人を超え、その大半が女性労働者であること、また、正規職員と比べてあまりに劣悪な労働条件の実態を訴えました。そして、非常勤職員制度のもとで、政府自身が女性労働者を安上がりな使い捨て労働力として、行政現場で活用している問題を指摘しました。
自治労連は、地方現場で非正規労働者として働いている組合員が参加し、自らの仕事や職場実態を告発しました。図書館司書の専門職には非常勤職員を雇用し、正規職員は管理業務を行っていること、非常勤の保育士でも正規と同じようにクラス担任を任されていること、しかし、その処遇は正規とは格段の差があることなどを生々しく報告しました。
今回の要請は、条約勧告適用専門家委員会がILO第100号条約（同一価値労働男女同一報酬に関する条約）についての検討を11月に行うことにあわせて行ったもの。同委員会は、本年3月に日本政府に対して、同条約の適用状況についての詳細な報告を求めています。
私たちの要請に対してILOの対応者は、具体的な報告であり、委員会の審議にとても有効なものだと評価。来月の委員会は日本政府を直接の対象としたものではなく、日本政府からの回答も寄せられていないこと、日本政府からは来年８月末までに回答が行われ、来年11月の委員会で今回の件も含めた議論が想定される、と話しました。
午後は、ILO結社の自由委員会に対して、消防職員の団結権問題について要請。消防職員ネットワークの菅沼会長と松永幹事が消防署における消防職員委員会制度のもとでの職員と当局の実態について報告しました。
また、国公労連からは、社会保険庁の解体・民営化に伴う雇用問題について情報提供を行いました。政府が決定した「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」では、社会保険庁職員を漫然とは新組織に雇用継承しないとし、懲戒処分歴のある職員は一切採用しないとの採用方針を決定、民間から1000人も採用すること、また、1400人を勇気雇用職員として採用すること、民間委託を拡大すること、などにより、現在社会保険庁で働いている職員の雇用を脅かすことは団結権侵害であることを訴えました。また、政府与党の圧力により、職場段階での実質的な労使交渉や労使協議が行われておらず、そのもとで組合脱退者が多数発生するなど、労働組合権や団結侵害は深刻な状況であることを報告しました。
ILOの対応者は、国鉄問題でのILOへの情報提供が問題発生から何年も遅れたことを踏まえ、事前に情報提供したことはとても有意義なものと発言。結社の自由委員会は、話題の中心点が民営化やリストラにあるものではなく、その過程で労働組合権が侵害されていることが重要である。もし雇われない場合、個人の問題でなく、組合員であること、どれほどの組合員が雇用されないか、その点について多くの情報がほしい。将来の段階で、新組織に移行するにあたり、何人が雇用されず、組合員が何人、組合を離れざるを得なくなった人が何人いたかが、審議の上では重要になる。組合を辞める圧力、組合員が脱退に追い込まれたことももう少し詳細に、どのように具体的に労働組合の活動が妨害されたかがわかるとありがたい、と述べました。
今回の要請は、このように今後の国内でのとりくみを進めるにおいて大変有意義なものになりました。また、ILOに対して直接自らの問題を訴えた自治労連の組合員が希望と確信を持ったのも大きな成果でした。
同時に、私自身は、ILOの対応者が非公式な要請にもかかわらず、相当な時間をとって、真摯に要請に向き合い、可能な限りの励ましとアドバイスを与えようとするその姿勢に感銘を受けました。午前の要請では、「当初１時間と聞いている」とのことでしたが、参加者が個々に実情を話しはじめると、｢私の時間を気にすることなく、話してください」と笑顔で対応。これには余談があって、要請前夜の打ち合わせでは、一人１分で話すための打ちあわせをしたのですが、通訳も含めるととても１分で終わるものではありません。結局、要請は１時間半にもなりました。
ILOの対応は、私たち公務労働において大いに学ばなければならないと強く感じたしだいです。
（by焼酎ロック）