私が映画を見る際、次に述べる三つの要素のいずれか一つがあれば、
「絶対に、どんでん返しがあるはずに違いない!」
「後半に意外な結末があるのに間違いない!」
「今までのすべての物語やキャラクターの印象が丸で変わるようなアッ!っと驚く展開が待ってるのに違いない」
と構えてみます。

もちろん、これは私個人のマイルールですので、
実際にはそんな事は無い例も多々ありますし、
別にそのような法則が映画界にはありません。
もちろん、この記事を見てくださった皆さんが間に受ける必要なんて全くありません。
繰り返し申し上げますが、あくまでも私個人の映画を見る際でのマイルールです。

それを踏まえて申し上げますと、構えて見る条件の三つは、
一つ目が「主人公が精神病患者であるか舞台が精神病院である」。
二つ目が「主人公が詐欺師である」。
三つ目が「映画のキャッチコピーが『最後の10分であなたは驚愕する…!』的なものである」。
以上の三つです。
一つ目と二つ目は「いや、それだけでそんな予想するのはちょっと…」
と思われそうですが、
最後の三つ目に関しては、大体の観客や視聴者が良くも悪くも構えて見てしまう事だと思います。

そして、本日紹介する映画はこちら『マッチスティック・メン』です。


ニコラス・ケイジが演じる主人公は重度の精神病患者であり、
長期間に渡り相棒と共に詐欺を生業としている生粋の詐欺師であり、
映画のポスターの煽り文句が「絶対キレイに、だまされる」です。

私の構えて映画を見る条件すべてがそろっています(笑)
というか映画をそれなりに見てきた私ですが、
ここまで見事に全部当てはまった映画は後にも先にもこの映画だけです(笑)

あらすじは、主人公は長年相棒と共に詐欺師の仕事をしていますが、
重度の潔癖症である事が悩みの種です。
そんな中、精神科の主治医に相談すると、
「主人公には妊娠中に別れた妻がおり、それが潔癖症の原因のきっかけではないだろうか。
別れてから15年ほど経つのだから子供に合ってみるのはどうだろうか」
と病気の改善法を持ちかけられ、妻に連絡した後に14歳になった娘と初めて出会います。
しばらく交流を重ねていく内に関係は徐々に良くなるものの、
ひょんな事から主人公が詐欺師である事がバレてしまう上に、
今までの仕事で一番の大物を狙った詐欺を働こうとしているというに、
その詐欺を一緒にやりたいとまで言い出します。
果たして、3人は無事詐欺を成功させられるのかどうか…!?
と言ったストーリーです。

私は前述した通り構えまくって見ました(笑)
さすがにここまでの要素が揃って騙される事はないだろうと高を括りました。

そして、当然終盤でどんでん返しが起こります。
正に歴代の意外な結末を売りにしている映画のような展開が起こります。

私は完全に騙され、茫然自失で開いた口が塞がらない状態になっていました(笑)

何といいますか、こちら側にここまで構えて見させているにも関わらず、
見事に騙し通し、その手腕も鮮やかと言う他なく、
私としては「素晴らしい映画だった」という他ありません。

ちょっとネタバレになりますが、
その意外な結末の中の一つに、小説や漫画・アニメと言った媒体ならば別段難しくはない仕掛けでも、
実写ではバレバレな仕掛けだから絶対にやる訳ないだろう、というものが含まれていますが、
それを見事にばれずにやりきったこの『マッチスティック・メン』には賞賛を送るしかないです。

以前、作品を紹介するのに意外な結末があるとバラすのはどうだろうか、という記事を書いたのですが、
この作品はバラしても大丈夫だと信じてご紹介しました。
何故ならば、これだけどんでん返しがある!意外な結末がある!
等と私が声だかに叫んでも「絶対キレイに、だまされる」からです。

興味が少しでも沸いた方がいらっしゃいましたら、
お暇な時でよろしいので、見て頂けたら嬉しい限りです。


蛇足ですが、ニコラス・ケイジが演じる主人公の結末には、
なんだかほんわかとした気分になり、映画を見た後に心なしか明るい気持ちになりました。

本日ご紹介する小説は、歌野晶午先生の「春から夏、やがて冬」を紹介します。


歌野先生と言えば、最も有名な代表作は「葉桜の季節に君を想うということ」だと思います。


日本推理作家協会賞を始め、さまざまな賞を受賞した作品ですし、
歌野先生の知名度も(元から高かったとはいえ)一気に押し上げた作品と言えるでしょう。
「葉桜の~」に代表されるように歌野先生は意外な結末・どんでん返しが非常に上手いお方です。
ですが、私は歌野先生の小説の魅力は意外な結末だけではないと思っています。

それは、小説に出てくるキャラクターの人間性です。
ここでいう人間性とは、読者が登場人物に関心を惹きつけられてしまう、といったものです。

具体的には言いますと「この登場人物はこの先どうなっていくのだろうか」とは、
小説なり映画なり見れば誰しもがそう思う事でしょう。
もちろん、それ自体はほとんどの作品について言える事なのですが、
歌野先生が書く小説に出てくる登場人物はそう思う事が他の作品よりもより顕著だと思います。

この小説は、スーパーの保安官である主人公が万引きをした女性を捕まえるも、
いつもならどんな理由であれ警察へ突き出すにも関わらず、ちょっとした理由から女性を見逃す。
そして主人公とその女性の二人の話を軸に物語は進む、というお話です。

はっきり言って内容としましてはミステリというよりも、少し異質だけれどよくある光景を描写しているようにしか見えません。
日常ミステリの類とも違いますし、ほんの少し日常からかけ離れた二人を淡々と描かれていきます。

ですが、それでも「この次はどうなるんだろう」「この二人は最後どうなってしまうんだろう」と思わされます。
なぜそう思うのかは皆さん人によって違うでしょう、
「区切りでのヒキが上手いから」「物語が小規模でも二転三転するから」と言った理由も述べられますが、
私は前述した歌野先生が描く人間の描写にこそあると思います。

よくいそうなキャラクターだけれど不思議と魅力的で、
いつの間にかは目は離せなくなっており、その登場人物が最後には歌野先生お得意の意外な結末を迎えるものだから驚愕する、

そういうものだと思っています。

この小説にも歌野先生お得意の意外な結末が「葉桜~」ほどではなく、
どちらかと言えば、歌野先生の作品の中でも意外な結末自体は抑え目ではあります、
しかし主人公と万引きをした女性の二人の結末には感極まるものがありました。

「どうしてこうなってしまったんだ…」「なんでこの二人の結末がこんな…」
そんな想いで胸がいっぱいになり、
私が涙腺が弱い人間だったら感極まって泣いていたかもしれません(笑)

歌野先生が好きなあまり少々熱くなってしまいましたが、
「春から夏、やがて冬」は「葉桜の~」ほど有名ではありませんし、
180度物語を見る目が変わるどんでん返しがあるという訳でもありませんが、
歌野先生の作品の中でも、私が特に好きな小説であり、
「葉桜の~」以外でどの作品を見ればいいかと聞かれたらば間違いなくこの作品を推します。

少しでも興味が沸いた方がいらっしゃいましたならば、
図書館で借りて読んでもBOOKOFFで買って読んでも友達に借りて読んでも、
とどのつまり、違法な手段でなければなんでもいいですのでぜひ読んでみてください(笑)
 

ミステリでは「誰が犯人か」・「どのようなトリックで殺したか」・「動機は何なのか」の3点が重要視されています。

 

しかし残念ながら、誰が犯人であるかは最も読者の興味を惹くのは言わずもがな、

どのようなトリックで犯行が行われたかも読者に取ってこれまた興味を惹かれる要素ですが、

犯人の動機については余り重要視されていませんし、読者もそこまで興味を抱いてはいません。

 

それは致し方無い事ではあると思います。

何故ならば、犯人の動機で驚かせるのは非常に難しいからです。

 

現に私も、すべてのミステリ作品を数えても犯人やトリックで驚愕した事は数知れずあれど、

動機で驚いたというのは両手で数えられる程です。

 

そんな中、本日ご紹介する映画がこちら、オールド・ボーイです。

日本の漫画原作の韓国映画ですが、私が犯人の動機で驚いた作品の中でもトップクラスの映画です。

 

主人公は何者かに路上で拉致され15年もの間監禁されます、

そして、15年後外に出された主人公はヒロインと旧友の二人の力を借り犯人を捜します。

犯人を見つけますが、そこで犯人は主人公に対してこう言い放ちます

「なぜ15年監禁していたかが重要ではない。なぜ、15年経ってから外へ出したのかが重要なのだ」と。

上記までは映画のDVD裏あらすじに書いてあるような事ですので、ネタバレの範疇ではなく作品紹介です。

 

この作品は、トリックについては単に怪しげな組織に頼み主人公を拉致する。

犯人については物語の半分もいかない内にあっさり見つかる、と犯人にもトリックにも驚く要素はありません。

当然、犯人の動機である15年監禁した後に外へ出したかがポイントになるのですが。

 

いやー、この動機には本当に驚かされました!

動機に驚いたというよりも、動機と連動したこの映画自体の仕掛けに驚嘆したというべきでしょうが、

漫画ならばとにかく、よくこれで実写で出来たなと感嘆しました。

 

映画自体も、アクション要素・サスペンス要素が多いですので最後まで飽きずに見る事が出来るかと思います。

犯人の動機で驚きたい方、犯人の動機で今まで一度も驚いた事が無い方などには是非とも見て頂きたい映画です!

 

余談ですが、漫画と映画ですと犯人の動機が全く違うので、私はどちらかと言えば映画をオススメします。

※当記事には『イニシエーション・ラブ』という作品のネタバレを若干含みます。

 

 

昨日の記事にて『そして二人だけになった』の小説にはどんでん返しがあると言っておいてなんですが、

実際に私自身が書いてみて、書いた後にそういった行為は少々どうかと思いました。

 

昨日の記事にも書いた通り、どんでん返しがあると言われただけでどうしても構えて見てしまいます。

例を挙げますと、恋愛小説である『イニシエーション・ラブ』にもどんでん返しがあると言われ、

ミステリ作品を多く見るにも関わらず推理が出来ない私でも、小説の途中で仕掛けとオチが読めてしまいました。

「どんでん返しがあるという前情報さえ無ければ終盤の展開に素直に驚けたのに…」という怨念めいた思いがややあります(笑)

 

『イニシエーション・ラブ』にどんでん返しがあると聞いたのはインターネット上による口コミの為、ある程度は致し方ないと思います。

現に、作者の乾くるみさんは推理作家とはいえ、

私自身は恋愛小説を読まないタイプの為、そういった前情報が無ければこの作品を読まなかったでしょうし。

 

しかし、口コミの類ならば致し方なしにしても、宣伝でこれを売り文句にするのはどうかと思います。

『イニシエーション・ラブ』は映画化されたのですが、その際のポスターがこちらです。

 

 

このポスターを見た当初「いやいや、恋愛映画でそういった事をばらすのはいかんでしょ!」と思ってしまいました(笑)

もちろん、宣伝や広告にはその作品の見所に力を入れるものですし、

こういった宣伝の仕方も致し方がない部分もあるとはいえ、

出来ればミステリ作品以外での、どんでん返しばらしは止めて欲しいものです。

 

猿の惑星ぐらい開き直ってくれれば何も言う事はないですが(笑)

 

ここまで『イニシエーション・ラブ』のネタバレをしておいてなんですが、

この作品自体は非常に面白いですので、ミステリ作品が好きな方にも恋愛作品が好きな方にもオススメ出来る小説(映画)です。

是非、一度ご覧ください。

ミステリ作品はどんでん返しが多い作品だけあって、

最後まで読み今まで読んできた作品に対する印象が変わる事は多々あれど、

ここまで180℃ひっくり返されたのは、私が読んできた小説の中でもこの作品を含めて両手で数えられる程度でしょう。

森博嗣さんの作品では、デビュー作の『すべてがFになる』が最も好きで、

これを超えられる作品は森先生の小説を読んでいても出会えないだろうと思っていたのですが。

いや、良い意味で裏切られました。

『すべてがFになる』も非常に好きな作品なので『そして二人だけになった』とどちらが上かは優劣付けられないのですが、

所謂、S&Mシリーズでは味わえなかった衝撃が味わえました。

 

何を書いてもネタバレになりそうな本作品、

一度でも森先生の作品を読んで少しでも琴線に触れた方や、

どんでん返しの衝撃を味わいたい方には是非ともオススメです。

 

…ただ、どんでん返しがあるというだけでネタバレになっているので、そこでオススメするのは難しい所です(笑)