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【新世代ロボアニメの模索】

 

個人的この1作

 超時空要塞マクロス 

 

81年から82年にかけて劇場版『機動戦士ガンダム』3部作が公開され、本格的ガンダムブームが到来したこの時代、ポストガンダムのひとつとして登場したのが82年10月より放送開始された『超時空要塞マクロス』である。

日曜日の14時という不利な放送時間にもかかわらず人気を博した。

作品の特徴を3つのワードで表すと「可変戦闘機ロボ」「歌」「三角関係」だ。

この3つは後に幾つもの続編やスピンオフが作られるマクロスシリーズにおいて、全作品に共通するワードとなるので注目していきたい。

 

まずは可変戦闘機型ロボット(=バルキリー)は、実在の戦闘機に酷似した飛行形態から巨大ロボットに変形するという斬新なコンセプトでファンを唸らせた。

メカニック作画監督は当時20代前半の板野一郎が担当し、彼が描いたアクロバティックにミサイルが飛び交うハイスピードアクションは「板野サーカス」という俗称で評判となった。

板野以外の制作陣も、バルキリーをデザインした河森正治、キャラデザ担当の美木本晴彦、その他多くが20代前半の若手スタッフであったのは驚きだ。

後に『新世紀エヴァンゲリオン』の監督で知られる若手時代の庵野秀明も、板野の元で主力アニメーションスタッフとして本作に参加している。

 

次に「歌(=アイドル)」と「三角関係」についてのドラマ要素について。

本作の主人公は新米パイロット一条輝、序盤は民間人として登場し後にマクロス艦内でトップアイドルに駆け上がるリン・ミンメイ、士官学校主席卒業のエリート早瀬未沙の3人。

序盤は異星人ゼントラーディとの戦争に巻き込まれる輝とミンメイの恋路がメインと視聴者に見せかけるも、そこに上官の美沙が割って入り三角関係のラブストーリーが展開されていく。

従来のアニメのような熱血正義漢ではなく、好きな子のために戦いに身を投じる主人公像は、新しい時代の等身大のキャラを映し出したと言える。

 

戦闘以外の文化を持たない異星人ゼントラーディにとって、ミンメイの歌はカルチャーショックを引き起こす弱点となり「歌の力」が人類の勝利に導いた。

この「歌の力」が大いなる戦果に直結する設定は以降のマクロスシリーズにも継承される。

初代マクロスの歌姫ミンメイを演じたのは歌手デビュー前の飯島真理

声優としての仕事も本作が初だったが、小悪魔キャラを見事に演じ、挿入歌「私の彼はパイロット」を歌うなどしてファンを熱狂させた。

主人公輝役も本作が声優デビューの17歳の長谷有洋で、等身大の少年を演じて人気を得たが、残念ながら1996年に31歳の若さで交通事故で早逝した。

 

以上、若い制作陣と若い役者が高い熱量を持って生み出した本作は、新世代ロボアニメの金字塔を打ち立てたアニメ史に残る作品と言える。

テレビシリーズ終了後の翌1984年には完全新作の劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が公開され、こちらも大きな反響を集めた。

 

 

 

 

こんな作品もありました

 じゃりン子チエ 

 

 まいっちんぐマチコ先生 

 

 ドン・ドラキュラ 

 

『じゃりン子チエ』は、81年4月に高畑勲監督によりアニメ映画化され、同年10月に映画を引き継ぐ形でテレビシリーズ化され、1年半続いた。

東の『サザエさん』に対抗する西の「じゃりン子チエ」と言われるほど、かつて関西地方で高い人気を誇った作品。

舞台は大阪西成区の下町、11歳でホルモン焼き屋を切り盛りする主人公チエと、その父親テツが引き起こす騒動がコミカルに描かれる。

高畑監督は本物の関西弁を使える声優に拘り、チエを元タレントの中山千夏、テツは吉本興業の西川のりおを配役した。

関西では放送終了後も何度も再放送が行われ、知らぬ人はいない存在となったが、仕事もせず博打に明け暮れる父親テツ、小学生が飲酒喫煙するシーン、連発される放送禁止用語など、現在は倫理的に放送不可となっているのは残念。

 

『まいっちんぐマチコ先生』は……しょーもないスケベアニメ。

内容としてはグラマラスな新米教師マチコ先生が生徒にセクハラを受け、服を脱がされるなどしたあとに「いや~ん♪まいっちんぐ!」というお決まりの台詞を言うもの。

当然チエと同様にこちらも現在は倫理的に放送不可だ。

なんと毎週木曜日の19時半から20時の時間帯に2年間(全95話)も放送された。

今視聴して決して面白い内容ではないが、当時の少年たちにとっては密かな楽しみであったことは想像に難くない。

同じセクシーアニメなら同時期に放送された高品質かつ大人気作の『うる星やつら』を取り上げるべきかと思われるが、そちらは自分が未視聴なことからマチコ先生の方を優先した(笑)

 

『ドン・ドラキュラ』は、手塚治虫原作のコメディホラー。

日本連続テレビアニメ史上、最短の打ち切りになった作品としてここに取り上げる。その驚愕のオンエア打ち切り話数は4話!

久しぶりの手塚アニメであったが、スポンサーとなる広告代理店が倒産したことで思わぬ不幸な作品になってしまった。

なんのアナウンスもなくテレビ欄から消えたことは、視聴者はおろか制作に関わった脚本家らも寝耳に水状態であったという。

ただしフィルムは8話まで完成されており一部地方局ではオンエアされた模様。

長らく幻となっていた5~8話も今では配信サイトで見ることが出来る。