ガールズバンドクライ

 

【評価】88点
ストーリー:★★★★
キャラ:★★★★
作画:★★★★
おすすめ:★★★★★

判定:良アニメ

 

【業界に大ガールズバンド時代到来の予感

老舗にして超大手、東映アニメーションが音楽業界を巻き込んでガールズバンドアニメに参入することで、1年前にニュースになった作品。

ただし完全オリジナルアニメで情報が少なく東映の本気度が不鮮明であり、しかもフルCGということ、キャストが全員声優ではないこと…などから事前の話題性は低く、謎多き初回でありました。

しかし、この第1話を見てワイは確信しました。今期の覇権はこれだと。

以下、長文レビューになりそうなので注意ですw

 

脚本を担当したのは『ラブライブ』シリーズなどで有名な花田十輝氏。

この方は名作と駄作の落差が激しい脚本家で、特にオリジナルアニメにおいては、当たれば100点、外れれば0点という経歴を持っています。

ただ、ガールズバンドというジャンルは、少女の感情表現を描きたい病の花田先生向きの作品であることは想像に難く、実際に先生の良い部分が目立つ仕上がりでした。

感情表現をやり過ぎると、逆に胡散臭くなったりキャラ心理の整合性が取れなくなったりしますが、本作は丁度よい塩梅に留められていたのかなと感じました。

 

次にキャラクターの良さと、関連して演じた非声優のリアルバンドの方々について触れさせていただきます。

まず主人公の井芹仁菜についてですね。

可愛くて真面目そうな見た目とは裏腹に半端なくぶっ飛んだキャラでした。

性格は見た目通り引っ込み事案なんですが、意外と我がままで行動が短絡的、キレると手が付けられない情緒不安定な子。一言でクソガキですw

イライラしたりネガティブモードに入ったりすると、アニメーション表現で黒と赤の棘オーラが発せられるのですが、最初違和感はありましたがだんだんとクセになります。見れば分かります。

明らかに花田先生好みのキャラであり、本作を盛り上げたまさしくMVPでした。

そして仁菜の家族がまたイイんですよね~。本人は父親をキ〇ガイ扱いしてたんですけど、このお父さん不器用で思春期の娘との接し方をミスってただけで、本当はめちゃくちゃ娘のことを心配してる善いパパだったということが第10話で描かれます。

喋るのが苦手なお父さんの代わりに愛を伝えてくれるお姉さんも最高でした。

こんなに恵まれた家族がいるのに学校を退学して家出とか、まったくこのクソガキは~!w

 

他5人の感想も書きたいところですが長くなるのでここでは割愛し、キャストさんについて語ります。

いや、良かったっすね!

演技面では仁菜と桃香が特出していました。

よく宮崎駿とかが「声優じゃ演技になるから人間味を見せるため素人を使う」みたいなこと言いますけど、まさしく仁菜は非声優ならではのリアルな人間味が出てたのではないでしょうか。加えて本職ボーカリストの歌声も持ち合わせてるとか、本当に最適な人材を発掘したものだと感服です。

準主人公のギターの桃香さんのcvは普通に本職声優の方かと思えるくらい上手で、まるでジェネリック日笠陽子みたいでした。

他3人は演技力という意味では及第点というところで、回によっては台詞が多くて可哀想だなと感じるキャラもいましたが頑張ってたと思います。

あらためて言いますが、楽器を弾けるプロのアーティストさんがアニメの声優をやる時点でとんでもなく凄いことということを忘れてはいけません。感覚おかしくなってますけど。

 

次にCGアニメーションについて語ります。

3DCGでバンドアニメというと、どうしても『バンドリ』のアニメシリーズと比較したくなりますが、あちらを手掛けたサンジゲンさんは作画っぽいCG、リミテッドとセルルック(CGを手描きのように見せる技術)を駆使して作画の温かみを残したアニメーションづくりを心掛けています。

対して本作は、昨今の映画スラムダンクのような完全フルCGということで「既存のアニメであること」を意識していなかったので、単純比較することは不可能と感じました。

利点としては、多大な手間が掛かるであろうサンジゲン式の手法より、おそらくは時間や経費が削減出来ることでしょう。

逆にデメリットは、CGへの違和感から作画主義のアニオタから嫌悪される可能性が挙げられますが、結果としてその不安は軽微なものとして終わりましたかね。

流行りさえすれば、人はそちらを向くのです。作画であろうとCGであろうと。

作画でなければアニメと認められない…そんな風潮は時代に合わせて消えるべきと思ってるので、本作のヒットは個人的には喜ばしいことでありました。

 

総評に移ると「これだけベタ褒めして神アニメ判定じゃないのかーい」って話ですが、ストーリーについては最終回が大団円ではなくビターエンドであったことから満点手前の星4つに留めておきました。続編が想定される締め方としてはある意味で嬉しい誤算ではありますが。

キャラについて、仁菜に焦点が当たり過ぎたせいで智やルパが掘り下げ不足になったことから、こちらももう一歩で。続編次第という意味ではストーリーと同様。

特にいつも笑顔のルパさんの過去については、第11話で一瞬だけ映った「家族の死に泣き崩れる過去描写」からして、壮絶な人生模様が想像できるので是非とも続編で描かれてほしいですね~。

作画(CG)について、ここで満点を付けると、これ以上が期待出来なくなることから、本作のようなノンリミテッドCGの成長、相対する他社のリミテッドCGの成長も含め、今後のCGアニメの発展を願って星4です。

結果、神アニメ判定ではなく、もう一歩の良アニメ判定になった事をご理解ください。

 

アイドルアニメは供給過多で時代が終わり、これからはガールズバンドがアニメの一時代を担っていく、そんなことを予感させる作品でした。

さらにはリアル世界で、キャラクターを演じるキャスト本人が楽器を演奏して各会場でライブをする…そんな異常な世界はこれまではブシロ―ドのバンドリだけで箱の外には広がらず、ほとんどのオタクは声優さんが「歌って踊る」だけで満足しておりましたが、本作のヒットで二次元ライブ界隈が変貌する予感がします。

もしかしたら楽器の演奏技術は今後、声優の必須技能になっていくのではないでしょうか!?