スキップとローファー

 

 

 

【評価】85点
ストーリー:★★★★
キャラ:★★★★
作画:★★★★★
おすすめ:★★★★★

判定:良アニメ

 

【恋愛要素は薄めの青春作品

これ、序盤は今期の目玉に躍り出てた青春アニメだった。

中盤以降は思ったほど伸びずに「普通」に終わったけれど、そこは原作有り作品における尺の都合で仕方なかった部分もあるのかなぁと、詳しくは後述。

メインキャラの男子(志摩君)がイケメンなので、パッと見だと『君に届け』のような少女漫画風の恋愛アニメに捉えられがちだが、終わってみればあまり恋愛展開にはならなかったね。

男女が登場する青春作品である以上、色恋沙汰が全く無いわけではないが、まだストーリーがそこまで辿りつかなかったというか…おそらく今後の展開で発展していくと予想されるも、少なくともアニメ内のお話限りでは恋愛ものではなかった。

 

本作の魅力は「ハートフルな人間関係を構築していくキャラクタ―たち」であろう。

中心となるのは主人公の岩倉美津未。

見た目は至って普通の、田舎から都会の高校にやってきた15歳。

少女漫画などの女子高生が主人公の作品って「主人公が可愛くない設定」のはずなのにキャラデザがどっからどう見ても美少女なことが多々あるけれど、本作の美津未は本当に普通のルックスに描かれていることに強い拘りが感じられる。

彼女の実直で裏表ない性格に、都会の擦れた少年少女たちの心が洗い流されていく…みたいなストーリーにほっこりした。

cvを担当した黒沢ともよさん(ご結婚おめでとうございます)の演技が見事にハマっており、やもすればモブと間違えられそうな見た目の主人公の魅力を大いに引き出せていた。

 

三者三葉のクラスメイトの女子と仲良くなっていく過程が中盤までのハイライトで特に第5話のバレー回が個人的ベストエピ。

自分と真逆の性格の美津未のことを内心小馬鹿にしていたミカが、互いの真剣なやり取りを通じて美津未のことを認め、自身も成長していく感じが青春全開だった。

さて、この辺までは今期の覇権まであるんじゃないかと予想していたはずなのに、終わってみれば「普通の良作」に収まってしまった原因について。

それは、1クール全12話という縛りがある中で、原作の枠に区切りとなる適当なシナリオが存在しなかったことが一番に挙げられるのではないか。

や、たしかに文化祭は高校生活における重要なイベントだし、濁されてきた志摩君の過去にスポットが当てられてはいたが、そこに主人公の美津未が重要なポジションに関われず、これまで人間関係の構築の中心にいた美津未が最後の最後に本当にモブになってしまったのが残念だった。

志摩君の家族や昔の友達の問題に決着した感じはなく、モデルの女については子役時代にどんなトラブルがあったのか定かではないが、仮に今後続編アニメが作られないのであれば全カットでも問題なかったキャラだ。

なんというか作品を締め括るにはモヤモヤした最終回に感じてしまった。

 

とまぁ、名作になりきれなかった原因を少し述べたが、これはアニメも原作も全く悪くない、仕方がないことだ。

すべての作品が「アニメ化したときのために序盤のクライマックスエピソードを用意している」と、そんなはずがないのである。

つまるところ1クールで描くには勿体ない作品だったということがズバリな話。

まだ原作が続いてること以外、今後のストーリーは全く存じないものの、多分だけど最終的に美津未と志摩は付き合うことになるし、それから2クールのアニメを制作しても良かったのでは?と思う。

 

制作はP.A.WORKS。

PAさんと言えばオリジナルアニメだけど、実は原作付き作品を丁寧にアニメ化することにも定評があり、直近だと『パリピ孔明』が挙げられる。あれははっきり言ってしまえば「出オチ作品」だったから1クールアニメで全力を尽くすので正解。

一方でスキローのような安定感がある作品は、それこそ昔の『君に届け』『のだめカンタービレ』の如くじっくり20話、30話かけてアニメ化して頂きたいところ。

が、昨今の業界は簡単に数クールアニメを作るのが難しい状況にあり、特にPAはここ数年で2クールにしたことで失敗した事例が複数有るからね…

しかもPAは「2期を作らない」ことでも知られるアニメ会社。

密かに最終回後に2期決定のアナウンスがあるのではないかと注目していたけど何も無くて残念無念…

重ねて言うけど1クール作品に終わらせるには勿体ない限り。ストーリー&アニメーション&キャスティング&音楽、すべてが魅力的な作品だっただけにね。

PAさんの地力を改めて実証した作品であり、マジな話で2期お願いしたい。