三重県訪問を振り返って


そんなわけでちょこっとだけ振り返りたいと思います。
詳しくは後ろの方にレポート風にまとめたやつがあるけど。
とにかく、現場を訪問して問題の多さに気がめいる感じでした。
地方がどれくらい疲弊しているのかがよくわかりました。
今のクラスメートに三重県出身の奴がいて、お土産で買ってきた赤福を食べつつちょこっと話をしたところ、東京にいるだけでは見えてこないものが本当にたくさんありますな。
いや、前から知識としては知ってはいたけど、実際に目で見てくると全然違いますわな。
社会に出たらこういう問題とも向き合わないといけないんだなーと思いました。
チャレンジングだ。
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養殖業の課外研修を終えて
インプリ3期
1、課外研修で学んだこと
大きかったことは2つの異なるステークホルダーの『現場』を感じられたことである。今まで授業を通して下調べを尽くしてきたのはこの現場を感じる資格を得るためだったことがよくわかった。
我々は研究施設と生産者との両方を訪問して、それぞれが持っている問題意識、お互いに持っている印象、これからの展望などを聞くことができた。共通していたことは今後に明るい展望を持っていないことである。今回訪問した場所は限界集落も多い場所であり、生産者側は嫁不足に悩んでいるという。また、養殖を続けている人の平均年齢は60歳以上であり、ほとんどで後継ぎがいない状態であるそうだ。さらに研究所の所長である中野さんは『地域としての取組みが必要。どうしたらいいか、我々がアドバイスを欲しいくらい』と強く訴えていた。
以下、研究所と養殖業との意見を順番に述べていく
研究所としては、いくら研究をしてもそれが産業につながらないことに問題があると考えているようである。素人である私にもウナギの生まれる場所がわかったことや、餌として何を食べるのかがわかったことなどは大きい発見であろうことがわかる。ただ、それでも研究所全体として活気をもたらすまでには至っていないようであった。中野所長が言うには、海外は産業として大規模で行っているのに対して日本は小規模で行っているに過ぎないということで、勝負が決まっているということを言っていた。
また、国に大きな援助を頼ろうにもすぐに結果を求める行政は何もわかっていないということを言っていた。養殖研究の成果とは5年程度で出せるものではなく、もっと長いスパンで見てもらわないと困るものなのだそうである。
養殖業の方はとにかく経営が厳しいことを強く訴えていた。三重県はジャスコが強いそうだが、値段はそこに代表されるスーパーに調整されてしまうこと、付加価値をつけて売り出そうとしても魚には限界があること、インターネットで魚を買ってくる人は少なく、努力しても数百匹程度が限界があることなどを聞いた。そして、養殖業に対する偏見はいまだに根強いことを知った。
養殖業のイメージを上げようと訪問する人は誰でも基本的に受け入れているそうだが、生協の人たちは養殖業を偏見で有害なものとまで罵倒するそうで、喧嘩寸前にまでなるという。
2、課外研修で感じたこと
おそらく、養殖魚が天然に比べて劣っているということはもはやありえないし、どこでどのようにして作られているかわかる分だけ天然よりも安全とも言えるかもしれない。それなのに10年以上前のイメージがいまだに払拭できずに苦しむ養殖を気の毒に思う。そして、日本の養殖業の方が本当に考え付く限りの努力をしていて、それにも関わらず生活が苦しい様子を見ていたたまれない気持ちになった。
遺伝子組換え技術や納豆ダイエットのように、正しい答えを一般人に伝えれば少しは改善されるような世界ではないことがよくわかった。養殖業の問題はインタープリターの問題をはるかに超えたところにある、政治や経営の問題が絡んでいるのであろうことを感じた。繰り返しになってしまうが、少なくとも私が話を聞いた人は全員できる範囲のことでベストを尽くしていた。それにも関わらず地方から若者の流出が止まらないこと、燃料の高騰が続いていること、魚の値段が下がり続けていること、経営材料としては苦しいことばかりであることを口にする。
そのような苦しい話ばかりの中で、特に私が印象に残ったのは養殖業の若い人の話である。年齢が私とちょうど同じくらいということもあり、短い時間であったが気持ちが入った話が聞けた。そもそも彼が養殖業を始めたきっかけは、両親がやっていた養殖業を父親が亡くなったことをきっかけに跡を継いだのだそうだ。彼はインターネットによる魚の通信販売にもチャレンジしていること、養殖業の仲間ともどうしたらより良く魚を育てられるのかについて話合う場所を設けていること、今まで行われてこなかったであろう取り組みについて話をしてくれた。
本当にやれることは全てやっていることが伝わってくる。そして『養殖は楽しいですよ』とまで言い切ってくれた。経営は苦しくってもやりがいはまだ失われていないらしいことがわかり、私がなぜかほっとさせられた。
3、まとめ
野菜だって肉だってみんな養殖であるのにも関わらず、魚の養殖だけ妙な偏見を持たれていると感じる。そして、遺伝子組換え問題や食品偽装問題で取り上げられたことが少ないせいもあってか、養殖に対する一般人の関心は低いと思う。
この魚独特の偏見にたいして疑問を発信するところまではインタープリターとしても可能だとは思う。しかし、その他の政策や過疎化や産業構造そのものの問題はインタープリターとしては限界を感じざるを得なかった。
優等生な文章で終わらせるのであれば、『今回のフィールドワークを通じて、関心を持つことの重要性を知りました』で終わらせる。けれども、今回はもう一言だけ付け加えたい。
私は科学の良いところはグレーな部分ははっきりとグレーだと言い切ってしまうところにあると思う。そこで、インタープリターとして産業の問題なのか科学技術の問題なのかはっきりしないときもグレーだと言い切りたい。養殖の問題はまさにそのグレーな領域の問題なのではないだろうか。産業構造をひっくり返すような技術も生まれていない一方で、過疎化や政策の問題も混在している。まさにグレーな領域な問題なのである。
今回のフィールドワークを通して、まさにグレーな領域を実感した。その一言で本レポートを締めくくりたい。