熊野のお宮で | 神々様の童話作家 あいかわゆき

神々様の童話作家 あいかわゆき

縄文時代の指導者であられた日本の神々様の物語★
神々様の愛を伝えながら、本当の日本を取り戻すお手伝いが
できればと願っています。

そのころ、イサナギさまとイサナミさまは、ソサ国(熊野)にあるお宮に住んでいました。

 

海のすぐ近くまで山がせまり、切り立った岩を見上げていると、體がそっくりかえりそうです。

 

たえまなく打ち寄せるあらあらしい波が、岩にあたってくだけちり、ちょっと気をゆるすと、海にすいこまれてしまいそうになります。

 

平らなところがほとんどなく、どこへ行くにも山にさえぎられて、ぽつんと孤立したお国です。

 

「ヒルコ、あなたが帰ってきてくれて、ほんとうによかった」

 

お宮のお庭をおさんぽしながら、イサナミさまが、目に涙をためていいました。

 

「お母さま」

 

ワカ姫さまは、胸がいっぱいになって、イサナミさまの横顔を見つめます。

 

「あなたを手ばなした日のつらさは、今でも忘れられません。でも、こうして、小春びよりの日ざしの中をあなたと歩いていると、すべてがむくわれる思いがしますよ」

 

「はい。お母さまがいつも歌ってくださっていたあわ歌を、カナサキさんご夫妻が歌いつづけてくださったことも、わたくしの心をなぐさめてくれました」

 

「ええ。カナサキ夫妻には、どんなに感謝しても、しきれることはありませんね」

 

「はい。そして、今、お母さまのお腹に新しい命がやどっていることにも、天からの祝福を感じます」

 

「ええ。ほんとうに、ありがたいことです。この子が生まれるころには、春のお花が咲きみだれていることでしょう」

 

イサナミさまとワカ姫さまは、これまでの時間を取りもどそうとされるように、希望に胸をふくらませて、にっこり微笑みあいました。

 

丸山恭平さんのをしてアート「ワカヒルメ」