母が腹膜癌で入院していた時。
お風呂は看護師さんではなく、
娘に手伝ってもらいたいという母の希望で、
私達３姉妹の誰かが
手伝うようにしてました。
入退院を繰り返してましたが、
最後に入院した日の夕方
私が病院に行くと
「お風呂に入りたい」
と 母。
すると、そこにいた看護師さんに
「もう夕方やし、今日入院したばかりやから
お風呂は明日にしよう。予約とっとくね。」
と言われました。
残念そうにする母…。
私は、
「じゃあ、お風呂は明日にしよう。
手伝うよ。」
そうして、「また明日
」
」と言って私は病院を後にしました。
しっかりと会話をしたのは
それが最後になってしまいました…。
翌日、先に病院にいた妹から
「お母さんの様子がおかしい…」とLINEが。
姉と私と妹、そして父とで交代で病院に
泊まっていましたが、
その日は私が泊まる番。
私が病院に着くと、母はもう
意識が混濁している状態でした。
昨日は普通に会話してたのに…。
あんなにお風呂に入りたがってたのに…。
私を見ると、母は
定まらない視線で
「姉ちゃん、
しんどいやろ、しんどいやろ。」
と、
私の手をしっかり握ってきて言いました。
姉ちゃんとは、母の15歳年上の姉。
今、施設に入居している93歳の伯母です。
昔、７人兄弟の末っ子だった母のお世話は、
主に伯母がしていたようです。
母にとって伯母は、母親に近い存在。
その上、
７人兄弟の中で、姉妹は伯母と母だけ。
独り身の伯母の将来を案じ、
自分が面倒をみると言っていた母。
実際、私の両親が住んでいた家の隣が
空き家になった時
その家を伯母が買い、
将来の準備を始めていました。
母が最後に心配していたのは、
私達３姉妹でもなく、父でもなく、
高齢の伯母の事でした。
面倒をみるつもりだった伯母のことが
ずっと気がかりだったのでしょう…。
こんなにも力が残っているのかと驚く程
私の手を強く握っていました。
最初は、
意識が混濁している母の姿に
ショックを受け、
手を握られたままボー然としていた私。
すると、側にいた看護師さんが、
「幻覚が見えてるね。」と。
私を伯母だと思い、
遠くまで見舞いに来て しんどいやろ、
と心配していたのです。
私は伯母になりきり、
「大丈夫よ。しんどくないよ。」
と返すと、
うんうん、と頷きながら安心した様子の母。
それでも、暫く
「姉ちゃん、姉ちゃん」と、
手はしっかり握ったままでした。
その後、
呼吸困難の状態が３日程続き
苦しみながら
母は亡くなりました。
伯母は、母の亡骸を見て泣き崩れ、
お葬式でも、
支えてもらわないと歩けない程 衰弱。
お墓に行き、
暮石に彫られた母の名前を見ても
その場で泣き崩れしまう伯母。
伯母にとって母は、娘のような存在。
そんな母が亡くなり、
悲しみは私達以上だったのでしょう…。
その後、伯母は施設に入居する事に。
施設のスタッフの方々にによくしてもらい、
施設にも慣れ、安心して過ごすようになった伯母。
コロナで大変な中、
親身になってお世話をして頂いている
スタッフの方々には本当に感謝しています。
母の代わりに、私達３姉妹も、出来る事は
していこうと思っています。
母が亡くなって一年後、
私の乳癌が分かりました。
母の抗がん剤治療の闘病をみて
母と体質が似ている事を考え
抗がん剤治療をしませんでした。
今を元気に生きられたら
数年の命でもいいと思いながらも、
父より長く生きなければ
という思いも持っていました。
病気だけではなく、
事故や災害など、
人はいつ死ぬか分かりません。
母が亡くなって間もない頃、
お世話になった心理士さんが、
「私も父を亡くした時、悲しかった。
でも、順番を守れてホッとしたんよ。
親を見送る事が出来て良かった。」
と話してくれ、
母を亡くした悲しい気持ちが
順番を守れた安堵感に少し変わりました。
母に対しては順番を守れたけれど、
父に対しても順番を守りたい。
母が亡くなった時の伯母を思い出すと
より強く思います。
親戚が、
「暮石に
赤字で名前を彫ると長生きするって
言うよね。」
え？ そうなの？
父の名前は暮石に赤字で彫られています。
このお墓に入るという
予約(？)みたいなものですよね
でも、心臓が悪く、難病も患い、
やはり、皆が当てはまるわけではないな、
と思っていました。
けれど、
去年使えるようになった新薬が効いて
元気になってきている父の様子をみると、
やはりお墓の名前…！？
とチラッと思い…
ホントに長生きするのなら、
私も彫りたいところだけど
どうなんでしょう…
最後まで読んで頂き
ありがとうございます
日々の出来事ランキング
ランキング参加中です。
宜しくお願いします