カラスが柿の木に群がって今か今かとおじいちゃんが死ぬのをまってた。

でもいざおじいちゃんが死ぬとそのカラスはどこかへ飛んで行ってしまった。


おじいちゃんは静かにベットで寝そべっていた。

周りを親戚のおじいちゃんおばあちゃんが取り囲み、誰か一人が脈をとって「あぁ逝ってしまったねぇ」とつぶやく。


私は学校でならった応急処置を思い出した。

意識の有無を確認して、呼吸の有無を確認して、脈の有無を確認して…

心臓マッサージと人工呼吸。


「おじいちゃん、おじいちゃん」

耳元でおじいちゃんに声をかける。小さい声からだんだんおっきい声にして。

そうしていたら、脈をとっていた誰かが「そんなに騒いだらおじいちゃんビックリして起きちゃうよ」

と言った。意味が分からずキョトンとしていたら、「静かに逝かせておやり」

私は肩をつかまれて、おじいちゃんの傍から離された。


「さわいじゃあだめだよ。」

「おじいちゃんはじゅうぶんに頑張ったんだよ」


騒いだらおじいちゃんは起きてしまう。寝かせておやり。

ケラケラと笑う親戚のおじいちゃんおばあちゃん。このまま静かに逝かせてあげることがおじいちゃんにとって救いなのだという。


「私もこういう風に眠るように逝きたい」だとか「皆に囲まれていけるなんて幸せね」とか。

口々に明るいトーンで話していた。



ここで私にできることは何もない。

そう、唐突に理解した私は玄関から飛び出て救急車が来るのを大泣きしながら待った。




おじいちゃんは、体のあちこちを悪くして入院したが、すぐにわがままを言って家に帰ってきた。

ガリガリにやせ細り、ほりのふかいおじいちゃんの眼は瞼が半分までしか下りず、眠っているのか起きているのかずっとずっと目を開けていた。

瞬きもできない眼がずうっとみていたのは地獄だったのかもしれない。


私は、あのとき、おじいちゃんを起こさなくて正解だったのだろうか。

ようやく眠ることができて地獄が見えなくなったおじいちゃんはどんな夢をみながら逝ったんだろう?


親戚のおじいちゃんおばあちゃんができなかった応急処置を私はすることができたはずだった。

応急処置を施さなかった私はおじいちゃんを殺してしまったのかな。


わからない。