1990年/アメリカ/144分
監督:オリバー・ストーン
出演:トム・クルーズ、キーラ・セジウィック、レイモンド・J・バリー、ジェリー・レヴァイン、フランク・ホエリー、キャロライン・カヴァ、ウィレム・デフォー ほか
7月4日、アメリカの独立記念日に生まれたロン(トム・クルーズ)は、第二次大戦で戦った父が自慢。
近くの森で、仲間たちと元気に戦争ごっこをして遊びまわる少年だった。
高校卒業を控え、東西冷戦の緊張が高まる中、国を思う気持ちがますます強くなるロン。
ベトナムで活躍しなければ、自分の存在意義はない・・・。
そんな思いを抱き、恋人とのささやかな思い出を残して故郷を離れ、憧れの海兵隊に入隊する。
1967年10月、ベトナムの戦場。
夕暮れの混乱した戦闘で、罪のない女性や子供まで殺してしまう米軍。
自らの行為に動転する兵士たちの前に、敵兵が襲いかかり、後退を余儀なくさせられる。
そんなさなか、ロンの目の前に現れた男の影。
引き金を引いた先で倒れ込んだ男は、部下のウィルソンだった・・・。
退却後、自分の誤射で見方を殺したと報告するロンだったが、上官は「思い違いだ」と退ける・・・。
泥沼化する戦場の中、敵の急襲を受け、足を撃たれるロン。
足を引きずりながら応戦するロンの胸を、さらなる弾丸が貫く・・・。
脊髄を損傷し、下半身不随となるロン。
劣悪な環境の病院をやっと退院し、自宅に戻るが、家族や町の人々は、ロンの無事を喜びつつも、その目は英雄を迎えるものではなかった・・・。
反戦運動が高まりを見せ、戦場を知らない人々が、平気で国旗を焼く。
そんな状況に絶望し、自堕落な暮らしに堕ちていくロンだったが、やがて自分の使命を見出し、行動に移す・・・。
80年代後半、「プラトーン」を皮切りに製作が相次いだベトナム戦争ものの映画のひとつ。
「プラトーン」も、同じオリバー・ストーン監督ですが、「プラトーン」の主人公は、貧困層やマイノリティばかりが前線に送られる実態に疑問を感じ、自ら志願するという設定。
2作品とも実体験がベースになっているようなので、いろんな理由でベトナムに行っったり、行かされたりした若者がいたんだと思います。
今はどうなっているかといえば、戦争の民営化が進み、より実態が見えにくくなっていると言われます。
貧困層へのリクルートとか、国を越えた傭兵ビジネスとか、いろんな実情を伝える本や記事を目にしますが、軍事ビジネスが肥大化・細分化して、全体像が分からない。
戦争を支える軍事ビジネスなのか、軍事ビジネスを支える戦争なのか、そこすら分かりにくくなっていて、とっても怖い気がします。
この映画の主人公は、曲がりなりにも戦争の英雄として迎えられ、その後の曲折はあるものの、自分の意思で、行動に出ることができました。
しかし、ビジネスの消耗品として使い捨てられ、不自由な体を抱えて生きていくことになった人々は、今どんな境遇にいるのか、よく分かりません。
今年3月に日本公開となった、「ルート・アイリッシュ」というイギリス映画は、民間軍事会社の問題に切り込んだ話題作ですが、いかんせん公開規模が小さく、栃木での上映予定もないので、まだ観る機会に恵まれません。
7月4日になると頭をよぎるこの作品。
撮影前、約1年間車椅子生活をして役にのぞんだというトム・クルーズの演技もみどころです。