1981年公開/日本/117分
監督:山田典吾
出演:芦屋雁之助、中村玉緒、山口崇、なべおさみ、小松政夫 ほか

学校の友達とうまくなじめず、いじめっ子たちとのケンカで相手にケガを負わせてしまう山下清少年。
心配する母親は、教師の勧めもあり、知的障害のある子供たちを受け入れている施設「八幡学園」に、清を入園させる。
愛情をもって子供たちと接する教師たちのおかげで、清はのびのびと学園生活を楽しみ、貼り絵の才能を伸ばしていったが、同じところにじっとしていることがつらくなり、18才のある日、放浪の旅に出る。
健在の母を死んだことにしてしまい、他人の同情を引くような作り話をでっち上げて、おにぎりやお金をもらったり、店で働かせてもらったり・・・。
せっかく仕事にありついても、しばらくすると放浪への思いが強くなり、また新たな旅へ。
放浪先は関東近郊にはじまり、より遠くへと広がっていったが、ある雑誌記事をきっかけに有名人となってしまい、一躍時の人に。
展覧会、講演、新たな創作と、多忙な暮らしの中に身を置くようになった清。
「今年の花火見物はどこへ行こうかな」
そんな言葉を最期に遺し、永い放浪の旅に出かけていく。
さくら市ミュージアムで上映された16mm映画を鑑賞。
宇都宮市の視聴覚ライブラリー所蔵のフィルムらしいので、機会があればフィルム上映を楽しめるかも。
芦屋雁之助さんが演じた「裸の大将放浪記」はテレビドラマが有名ですが、こちらはその映画版。
テレビドラマが、相当脚色されたフィクションだったのに対し、映画版は比較的忠実に山下清の人生を追っています。
自分も子供のころにテレビシリーズを見て、山下清は「子供のような大人」で、天真爛漫、自由に生き、旅先で数々の作品を残したんだと思い込んでいました。
清が亡くなる最終回は、家族に涙を見られないように苦労して観た記憶があります。
平成8年、宇都宮市内の百貨店で山下清展が開催され、貼り絵を中心とした作品の数々と、自筆の日記などが展示されました。
すっかり魅了され、図録や放浪日記をむさぼり読み、出版されている関連本なども手に入る限り目を通しました。
そうして一息ついたころ、自分の中の山下清のイメージがすっかり変わっていることに気付きました。
そこにいたのは、几帳面で神経質で、理屈っぽい男。
いい景色を眺めるのは大好きだけど、旅先で絵なんかちっとも描かない。
「仕事だから」描いた作品。
そんな山下清を知り、なぜかますます親近感が湧いた覚えがあります。
出版されている放浪日記を読むと、那須町にある黒田原駅や豊原駅での出来事、日光見物の様子なども綴られており、自分の親や祖父母、近所のおじさんか誰かが、山下清とニアミスしたんじゃないかとか想像すると、なんだか楽しい。
日記には、清と接した人々が、どんな態度で何を話したかも、細かく描かれています。
横柄なおまわりさん、残酷な子供たち、見下す人、ウソの身の上話に同情してくれる人・・・。
自分に投げかけられた、キツイ言葉、そっけない態度、ありがたい親切・・・。
風景の記憶もそうですが、記憶の量も質も、常人をはるかにしのぐ特殊な能力があり、サヴァン症候群でもあったとされる山下清。
そのナイーブなセンサーと劣化しない記憶装置を持って、どんな風に周囲の人々を見ていたのか、日記からその断片が垣間見える気がします。
この映画が公開された1981年、山下清はすでに他界していましたが、この作品の他にもう1本、清がまだ元気だったころに公開された「裸の大将」(1958年)という映画もあります。
小林桂樹さんが清を演じていますが、清の甥御さんが書いた本によると、あの独特のどもった話し方をマネされるのは、あんまりうれしくなかったようです。
また、山下清本人が登場する映画もあります。
渥美清主演の「拝啓天皇陛下様」という作品がそれで、街角の掲示板を読み上げる清の、ユニークなシーンがちょっとあります。
「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本・喜劇編」のひとつとして、9月4日(火)よる9時から、NHK・BSプレミアムで放送されるますが、いつかこのブログで取り上げたいと思っていた名作です。
Youtubeでそのシーンがアップされていたので、リンクしておきます。
***映画「拝啓天皇陛下様」、山下清登場シーン***