朝。ひいひい言いながら公園の遊具で懸垂をする私の足元に、すたすたと猫が寄って来た。
その茶トラは、私の足元の砂場におもむろに穴を掘り始めた。
なるべく静かに着地し、私はその動きを見守ることにした。
穴をこしらえた茶は、そこにしゃがみこみ、きばりだした。
初めて見る猫の生エチケットシーンである。
蝉の声もほとんど聞こえなくなった公園で、息を殺してその様子をみていると、猫も人間も、生命の営みはたいして変わらないものだな、とおもう。人間はいちいち穴を掘らなくていいから楽なものだ。
しかし、なんで私の見てる前でやるのだろう。変わった性癖の猫なのだろうか。なんだか可愛らしく思えてきた。
やがて完遂したらしく、その周りをくるりとまわり、確認し、匂いを嗅ぐ。これを3.4回繰り返す。
ふたたび元の位置に戻り、前足で砂を集め始めた。
おお、これがあの有名な猫の習性、後始末てやつか!と興奮気味に、さらに見守る私。
その小さなむくむくした前足で砂に爪痕を残しながら作った山は、ブツとはあさっての方向に出来た。
茶はのろのろとまた、自分の後ろにある砂を集めて山を作る。
出来上がった2つの山の谷間に、ブツ。
これはなんだろう、何がしたかったのだろう。なにを意味しているのだろう。
京都の石庭のようにも見えてきた。テーマは禅だろうか。
見る側に深遠な疑問を抱かせる、そんな優れたアートのような茶の脱糞劇であった。
すたすたと去る茶に、ひゅーと口笛を吹いてみたら、心底驚いた顔をしてこちらを見て一瞬立ち止まり、せかせかと走り去った。私に気づいてなかったのだろうか。