紅花の色紙が欲しくて、原秀造先生にいただいたものです。

 原秀造先生は私の上司で、本当にお世話になりました。先生は鋭い方で、私が書いた文書は真っ赤になって帰ってきました。その時代はワープロの時代で、プリントアウトした文書の語順をかえたり、それに伴って「て」「に」「を」「は」をかえ、そのつどその部分や文字を丸で囲って換える位置に矢印でもっていくという、元原稿を尊重してくれるものでありました。初めのうちはたくさんの囲んだ長まるがどこに行くのか分からず、頭がこんがらがって困りましたが、それが分かってその通り打ち直して読んでみると、なるほど、これはよく分かる文章だと感心したものですした。

 原先生は美術の先生で、紅花の大作をたくさん発表していました。抽象の世界を大切にする先生に、大作を描く秘訣をお尋ねしたことがありました。先生は「とにかくていねいに絵の具を置いていく、それをどれだけ時間をかけてやれるかに懸かっている。どんな仕事でも同じだ。」という答えでした。カンバスを前に考えながら描くポーズを予想していたのでしたが、全く異なるもので驚きました。確かに先生の絵には、計算し尽くされた美しさが輝いていました。
 
 この色紙では、故郷の紅花の美しさと、紅花を慈しみながら育ててきた故郷の人びとの想い、そして故郷の美しさを温かく表していただきました。私の宝物です。