「春風春水一時到」という漢詩でしょうか。どこかで聞いたことがありそうだなと思って調べてみたら、白居易(白楽天)の作でした。昔、漢文の授業で習ったようです。ただ、白居易の作では「一時来」です。

『 府西池  白居易
 
 柳無気力枝先動
 池有波紋冰尽開
 今日不知誰計会
 春風春水一時来 』

この漢詩を現代風にいうならばこうなるでしょうか。
「柳の木は力なく枝をたれているが 枝は春の風に吹かれて動きはじめている。池の水面には風にあたって波紋ができており、氷もすっかり解けている。こんな様子をだれがつくりだしたのだであろうか。春の風と春の水とがいちどきにやってきたからだ。」

 この詩は、春の喜びというか、季節の訪れの不思議というか、そういうものをうたったのでしょうか。白居易、白楽天は中国・中唐のころを代表する詩人だそうです。

 この短冊には「出版記念式」の言葉があります。「春風春水一時到」、春の訪れを感じるこの頃、うれしい出版を成し遂げた方へのお祝いの言葉とも考えられます。また、枝を垂れていた柳が動き出すように、冬の氷が溶け出すように、努力に努力を重ねて力作を創造したことをたたえる言葉かも知れません。

 それにしても、609の「百花の春一時に咲きいづるみちのく」にあるように、人のあり方と、物事の有り様は何か深い関わりがあるようです。