須藤克三氏の和歌、「山独活の若きを吾に進め寄る幾年ぶりかの妻のやわらぎ」です。
 
「山独活(やまうど)」は今の時期の山菜の王様です。雪が多い今年はもう少し後に出るのでしょうが、この頃は促成栽培という手があるので、店頭にはもう出ています。
 広辞苑には次のようにあります。
「ウコギ科の多年草。産地に自生。茎の高さ約2メートル。葉は大型羽状複葉。夏茎頭・葉腋に小白花が球状の花序をなして群がり開く。軟白栽培の若芽は食用とし、柔らかく芳香がある。根は生薬の独活(どっかつ)で、発汗・解熱剤。」
(広辞苑 第五版)

「うど」の漢字「独活」は、中国名の生薬の文字が当てられたようです。普通、天然の「独活」のことを「山独活」と言っています。山中の傾斜地を探すと、前の年の枯れた茎の跡近くにウドの若芽を見つけることが出来ます。その「山独活の若きを吾に進めよる」ですから、自分に「山独活のわかい、とりたての、充分に苦みのある香り高いウドを、『さあ、初物のウド、どうぞ。』」と、妻が進めてくれている、そんな情景をうたったものです。そして、その「幾年ぶりかの」妻の「やわらぎ」を感じて驚いている作者です。 

「幾年ぶりかの」は「妻のやはらぎ」に懸かる言葉ですが、それは、「幾年ぶりかの」「山独活の若かき」が手に入ったことであり、そして「山独活の若かき」を「酢味噌を付けて刺身のように食べさせようか」と考えたり、「煮物にしようか」と思ったりしている「妻」のことを思っていることも「幾年ぶりかの」ことだったのだろうと思いました。うらやましいご夫婦なのです。