山形県の庄内地方では「おねえさん」の意味で「あねちゃ」と言います。隣県の秋田県、新潟県でも「あねちゃ」と使うところがあるようです。その方言「あねちゃ」を題材にした土鈴、「あねちゃ鈴」です。土鈴の後ろに大きく「あねちゃ」と書いてあります。
この土鈴のあねちゃはの顔は、目とわずかにほほが見えているだけです。これは「はんこたんな」という庄内地方に広く用いられた若い女性の顔を隠す風習です。この風習をとりあげた土鈴です。
 
2018年12月2日に「山形の創作土鈴 はんこたんな 紅花娘鈴」を取り上げました。その中で「はんこたんな」について「庄内平野に働くおばこ達は、顔を布で覆つて日焼けから肌を守っています。この姿をはんこたんなと呼んでおります。」と書いています。ここでは「働くおばこ達」と「おばこ」といっています。
 
「おばこ」は「庄内おばこ」や「秋田おばこ」に用いれている言葉です。「庄内おばこ」では「おばこ来るかやと 田んぼの外(は)んずれまで 出て見たば おばこ来もせで 用のない たんばこ売りなど 触れてくる」と歌われています。「あねちゃ」とほぼ同じように使われているようです。
 
「はんこたんな」について「日本国語大辞典(小学館)」に次のようにあります。
「(たんな(手綱)の半分の意)山形県,秋田県附近で絣、紺木綿を頭から顎にかけて巻き付け、目だけをだす頭り物。日よけ、虫よけになるほか、稲刈のとき穂で顔をいためるのを防ぐ。」
          
下ぶくれの優しい顔つきに細い目と薄桃色のほほ紅もかわいらしい「あねちゃ」です。紅花色の持ち手の紐を振ると、その風情通りのやさしさと、てきぱきと仕事に向かう賢い「あねちゃ」の音がします。