愛してるって いう


わからない言葉をつかって

わかった気持ちになるより


これは共感できるね

ここは違う考えだよ と話し合いながら

分かりあえる


接点の数を増やすことの方が

あなたとの 愛の本質にちかいかも









卒業時期の淋しさは

「別れ」から来るものではなくて

「時間がもう戻らない」と

はっきり認識してしまうことからくるもの

昨日まで当たり前だったことが

「卒業」という区切りを与えられることで

「過去」に押しやられてしまう淋しさです


卒業時期の淋しさは

「失うこと」の多さからではなく

「気づくこと」の多さから生まれます


あの時もっと話せばよかった

もう少し大事にすればよかった

そんな思いが

後から静かに浮かび上がってきます

日々のなかにあって

気づかなかったささやかな幸福が

終わる直前になってようやく輪郭を持ってくる

人はそれを少し遅れて理解することしか

できないのかもしれません





とうさん もうやめて! と

泣いて 父に抱きつくと

一瞬 たじろいだあと

すまない ごめんな
と言いながら ぼくを強く抱きしめて

父は ポロポロと涙を流す

母はその隙に 玄関を開けっぱなして
真冬の 暗闇にまぎれて逃げ出して

部屋には静寂が戻っている

やがて 父が眠りにつく

ぼくの目はまだ冴えているけれど
そろそろ布団に入ろう

深夜の調停は

いつもの ぼくの日課だ



あぁ いい曲だ♬

きみに聴かせたい
カティンが弾く かすみ草

そして

今朝のこの
気持ち良い天気はどうだ✨

ぼくより寝坊な きみに
一刻も早く

この気持ちを
生きている感動を伝えたい

自分の想いを伝えたい気持ちは

誰にでもあるだろうけれど



でも
今日は だれかに ではなくて
きみに伝えられないことが

きみに伝えられないことが
こんなにも苦しい




おかえり と きみに言った

ヘッドフォンして

画面にむかうきみには 聞こえない


それは わかっている


明日でテスト 終わるね 頑張って

おやすみ と伝えたかった


きみはまだヘッドフォンして

画面にむかっているから


きみに 届かない言葉を 

心の中でつぶやいた


聞かぬものも 日々に 疎し




新幹線から乗り換えた山手線。品川から新宿へ向かう車内は、ちょうどラッシュアワーの混雑だった。

そんな中、僕の少し左側の優先席がひとつだけぽつんと空いていた。

そこに、五反田で乗り込んできた小柄なインドの女の子。彼女はその空いている席を見つけて、その席の前に立つ青年に尋ねた。

「空いていますか?」

青年は、にこりと微笑み「どうぞ」と答えた。

彼女は嬉しそうに「ありがとう」と会釈しながら座る。

そのやりとりをすぐ隣りで眺めながら微笑ましく思っていたその時。

彼女は僕をまっすぐ見上げて、こう言った。

「座りますか?」

満員電車で、誰もが少しでも楽をしたい時に、彼女は自分が座った席を譲ろうとしたのだ。

自分のことより、人を思いやるのは当たり前でしょうとでも言うように、彼女の黒い瞳には優しさが溢れていた。

僕は笑顔で「いやいや、大丈夫」と手を振る。すると彼女は、ふっと表情をゆるめて静かに目礼をした。

ただ それだけの出来事だけれど、
人はこんなにも優しくなれる。

そして、優しさは誰かの心を
そっと温めるのだ。

俵万智さんという歌人(短歌を作る人)がいます。その俵さんに 次のような短歌があります。

 振り向かぬ子を見送れり
 振り向いた時に振る手を用意しながら


読んで 

きみのことを思い出しました

幼稚園まで送って
きみが 園の玄関に消えるまで

近所の小学校まで
きみと歩いて 校門で別れるまで

そして
修学旅行の朝 見送るお母さんの
後ろのドアの向こうで

いつもいつも
きみを見送っていました

振り向くきみを 待っていました
振り向いた時に 振る手を用意しながら


父の日がちかいですね


父の日は 

子どもが父親に感謝を伝える日ですが

でも ぼくにとっての父の日は
ぼくが 父のことを思う日です

父の愛情に

うまく応えられなかった ぼくが

父の気持ちを

うまく汲み取れなかったぼくが


父のことを思う日です


いつもいつも 父がぼくに用意していた

「振り向いた時に振る手」を

思い浮かべながら

父に感謝する日


{6A74489B-DFC7-4776-A5A8-52D84B8EC33E:01}


おとうさん
今年もまた この季節がやってきました


あの日 呼ばれて 本当に久しぶりに

あなたの病室に 家族全員が集まりましたね


めったにないことが 起きたのだから
自分の身に何が起きようとしていたのか
あなたには わかっていました


わかっていて よく来てくれたと 

嬉しそうに 口元だけで微笑んでくれました


意識が なくなる前に

わたしたちは あなたの大好きな桃をむいて 

食べさせてあげることにしました


よく冷えた桃を食べながら
満足そうに 両手の親指と人差し指で
輪をつくって うんうんと頷きました


目は閉じたまま 一言もなかったけれど
それが あなたとわたしたち家族との
言葉のない 最後の会話でした


それから十一日後の 夏休みが終わる日
あなたは静かな場所に 還っていきました


あなたが大切にしたかったもの
心の底から求めて 届かなかったものを


8月の桃が つなげてくれました





ひとりで 街を散歩したんだって?
平日の休みは 贅沢だ

晴れた日の エアキャビンは
気持ち良かっただろう?

五月の陽光と
海のキラキラと 光る空と

束の間の静寂に 祝福される 

きみだけの特等席が
うらやましい

自分以外の 誰かのために
生きてきたから

自分以外の 
愛する人たちのために
がんばって きたから

だから
ひとりに なれなかった

気がつくと

やっと
ひとり を楽しめる年齢になった

だれか
の陰に隠れて見えなかった
じぶんを

今日はエアキャビンの
特等席で 見つけたんだね