便所の鏡の前に立ち、汗を浮かべて緊張した表情でポケットから拳銃を出す男(佐田啓二)だったが、人が入って来たのであきらめる。

社員を前にして倒産寸前の会社を救うためには解雇の必要があると話す社長(菅井一郎)の前に歩み出たこの男、木口はクビ切りをやめてほしい訴えてこめかみを拳銃で撃つが一命をとりとめる。格好のネタを得た記者らが病院に集まる。

木口は自らを犠牲にしようとしたと記者に状況を説明するのは彼の命を救った金井(織田政雄)だった。記者の中には狂言自殺だと言う者もある。病院に駆けつけた木口の妻、幾代(岩崎加根子)からも遠慮することなしに話を聞こうとするが、相手が記者だと知って彼女はその場を急いで離れる。

「週刊日本」の記者、原田(三上真一郎)とカメラマンの光沢(佐野浅夫)は醜聞をでっち上げることに何の罪も感じていない。

昭和生命宣伝部の野中(芳村真理)と課長の島本(戸浦六宏)が木口を「コマーシャルタレント」にして自殺を宣伝に利用しようとする一方、ミシンの内職で家計を助けている幾代は保険会社の話を受けろと言う。解雇された金井が木口宅を訪れ、話を受けてくれれば自分も助かると話す。

そんな仕事にはまったく不向きな控えめな人物であるにもかかわらず、仕方なく広告塔となる契約した木口は、金井とともに昭和生命で自殺の場面を再現するような写真を撮られる。保険加入者は急増するのだった。

木口がピストルをこめかみに当てている写真は「皆さんが幸福になるべき時です!」という文句が添えられて利用され、巨大広告が昭和生命ビルの壁を覆う。おまけにテレビ出演まで。木口は自分を主人公にして作られている美談に気持ちが落ち着かないが、夫が有名人になり、また収入にもつながり、幾代は満足そうで家を買うことまで考え始めている。

野中は木口をさらに利用しようとするが、作られた自分が本当の自分だと思い始める木口。招待された労働者集会で演壇からあいさつする木口を野中は不安げな表情で見つめる。

木口を潰そうとする原田は性的欲求不満らしい幾代を犯して彼女を小型カメラで撮影し、その写真をネタに木口を脅す。しかし、みんなのためになりたいとそんなことは上の空の木口だが、写真と引き換えに原田にカネを渡す。そして彼は新聞記者を装った者に「非国民だ!」と言われて腕を刃物で刺される。妻の不貞をなじれない木口を幾代は逆に責める。

原田は旧知のモデル、洋子(柏木優子)と痛飲した木口がベッドにいる写真を撮り、醜聞に仕立て上げる。昭和生命は野中を解雇し、木口と金井との契約も解消する。木口は大衆に対する責任があると深刻に考え込む。重役室でピストル自殺しようとするが、また狂言だろうと相手にされない…。

巨大広告が撤去される。

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佐田啓二には会ったのは久しぶり。

芳村真理て、ほんまに役者やったんや。腋毛が見えています。ハハハ。まったく庶民的ではないテレビ番組司会者としてしか記憶にないけど。吉村実子の姉ちゃんやったんや。

頭を前にする担架の運び方がおかしい。

大毎オリオンズの試合中継がテレビで流れている。

保険業界から苦情なかったんやろか?